この一年ぐらい、海外のメディア、特に放送局のエグゼクティブと話をする機会が度々あり、彼らのデジタル領域への本気度合いを教えられることが結構ある。
その中で最も課題となっているのが「人材」問題。
ほぼ全てのメディアを通じて耳にするのが、
「デジタル時代にあわせた人材をどう確保していくか?」
といったトピックであり、しかも
「レガシー人材に期待する時期はもう過ぎた」
という話である。
この「期待する時期はもう過ぎた」というのは、オフライン/アナログしかわからないレガシー人材であっても、デジタルシフトに向けた教育を適切に行えば、デジタル人材へとトランスフォーメーションできるだろうという「期待」はもうやめた、という意味である。
そのため(日本国内のブランチに限った話だけでなく)全世界において、レガシー人材はクビないしはそれ相当のことになっていて、中で人を育てることよりも、外からデジタル人材を雇い入れる rehiring 状況になっている。
従来どれだけ貢献してきた人材であっても、レガシー人材としてラベルを貼られてしまうとお役御免になってしまい放り出し、社員をそうとっかえしないと存命していけないというぐらいの危機感を国外のメディアは持っているのだ。
また、若手のデジタル人材であればまだそこそこ集められるものの、シニアのデジタル人材の確保はどこも困っていて、英語がそこそこできてデジタルでのビジネス構築・マーケティングやセールスの経験があれば、今は売り手市場ということになっている。
特に40代あたりの、特にマーケティングやメディア、広告に関わる人は「うまれながらのデジタル」ではない世代なので、自分をレガシー人材としてラベルを貼られて生きていくか、あるいはデジタル人材として見せていくかで今後のビジネス上の活躍が変わってくる可能性が大いにあるので、相当気をつけたほうがいいと思う。
もし、少しでもデジタルのビジネス(特に事業開発とマーケティング、セールスもあれば尚可)への経験をリッチにするチャンスが見つかれば、とりわけ40歳代の人は飛び込むべき。シニアリティとデジタルの両方でしばらくは食いっぱぐれがなさそうなので、リスクと思わず、チャンスを掴んでおくべきだ。
一方若い世代、20代から30代は逆に「デジタル世代」としての特別な徴用は今後なくなるので、デジタル以外でのスキルセットを身に着けたほうがいいだろう。逆に、事業開発やマーケティングのスキルというのは「デジタル外」の知識と経験によってリッチになっていくので、その点を学べばいいんじゃないかと思う。
いずれにせよ、海外メディアのデジタルシフトの本格化や、レガシー人材・デジタル人材問題を見ても、日本の市場はまだまだ牧歌的に見えるな・・・
追記 17.07.14)
「デジタルシフトって何?」、「レガシー人材とデジタル人材って?」という声があったので追記。ここではメディアビジネスの話をしているので「デジタルシフト」というのはメディアのデジタル化に伴う様々な変化のことを指す。例えば、受像機としてのテレビへの番組配信からインターネットを通じたコンテンツ配信、デジタルデバイス普及に伴う視聴者の視聴体験の変化(デバイスの多様化、タイムシフト視聴etc)、そして広告商品や販売形態の変化など。そして「デジタル人材」とは、デジタルシフトした放送局ビジネスにおいて商品開発や商品販売、それに伴う各種分析などを行うことができる人材を指す。「レガシー人材」とはアナログ時代の旧来の放送局のやり方や広告ビジネスしか理解できない人々、ということ。