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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

YouTubeとテレビの効果を比較する意味。っていうか、YouTubeの価値は大手広告主よりも地方や中小企業にあるんじゃないか?って話。

テレビとYouTube

■国内のマーケターが「YouTubeマーケティング」にいま取り組むべき理由

タイトルが某ブロガーの影響受けてんじゃないかとか、この「**を取り組むべき理由」というタイトルが薄い内容のブログ記事の間でデフォルト化してるよなあ、とかそういうのはさておき、こら、植原くん、この分析はどうかと思うよと思いつつ、ミスリードが増えそうなブログ記事だったので、以下、書いてみる。

まぁ、そもそもこの記事はちょうどトライバルメディアハウスが「YouTubeマーケティング支援サービス」というのを始めます、というリリースに合わせて書かれたのだと思う。

ちなみにご存知のように同社の池田紀行社長とは長い付き合いなのだけれども、こういう表に出てる記事については容赦せず、正しく議論、正しい考察を導き出すためにちゃんとつっこんでおきたい。なんかねえ、最近disるって言葉のせいで、正しいこと言ってても議論になんないから、つまんないよね。

さて、そもそもYouTubeのTrueView広告の平均完全視聴%が10%ってことは、残りの90%にとっては益のないものを見せられているわけであって、加えてそれとリマーケティングなんかを組み合わせると、メールマーケティングやリードナーチャリングの業者が、メールを大量にリストに送って「*%の人が開封しました。そしてその人たちにはこのメールを。開封しなかった人にはこのメールを」と結局はスパムマーケティングをしているのとなんら変わりがない。YouTubeはGoogle一家なわけなので、世界の情報を整理するという観点で、こうしたレガシーな広告と同じようなことは辞めて欲しいのだが、どうも「ユーザーにとってそれどうなん?」という観点は、同社の広告プロダクト開発の中で、プライオリティが低くなってきているようだ。おい、サーゲイ、ラリー、どうしたんだよ。

上記のブログ記事は全体を通じて、「テレビとYouTubeの組み合わせで効果が高くなりますよ」、あるいは、「テレビとYouTubeの効果比較はこんな感じですよ」と書いてあるのだが、文中に、YouTubeは若い世代を、テレビは上の方の世代を、といってる一方で、YouTubeとテレビの組み合わせで効果が高かった、と言ってるあたりは、なんか一貫性がないぞ。。。どちらかの理屈が間違ってんじゃないか?と思わせる文章の論理的欠陥についてはとりあえず置いといて、本件で一番つっこんでおきたいのは、YouTubeとテレビのコストの比較の部分である(ちなみにえてしてネット側の人間が書いたテレビ含むマスマーケティングの話は無知や思い込みや経験の欠如によってミスリードなことになりやすい。個々人の問題ではないと思うけどね。でも気をつけて書いて欲しいもんだ)。

テレビの広告枠を扱ったことがある人であればわかると思うが、

1)スポットは大人買いしないと買えないので100万で買うとかできない(首都圏) 2)地方のスポットのGRPいくらはべらぼうにリーズナブル(だから地方ではネットよりもテレビのほうが効率がいいことが多い)

ということになっている。

※追記) すごいシンプルなことではあるんですが、物理的・地理的影響を受けやすいレガシーなメディアの広告枠の金額は、そのエリアごとの状況で価格が違います。例えば東京と福岡では、同じテレビスポットの枠であってもGRPあたりコストは違います(もちろんそれぞれのエリアの媒体枠を東京から買おうが福岡から買おうが同じ値段ではあるが、ここでいいたいのはそういうことではない)。つまり東京での値段感覚と福岡での値段感覚は違うのです。でもネットは首都圏だろうが地方だろうが、買い付ける金額は同じになるので金額感は全国同じなんですよね。

このブログの分析ではテレビを100万円で区切ってるけど、そもそも首都圏のスポットは100万円では買えないわけで、もう一つの問題としてYouTubeは基本的に地域を制限して広告を出していないので場所関係なく見られる可能性がある。となると、正確にテレビとの比較を出すとすると、TrueViewの各視聴エリアの割合を出して、そのエリアごとのGRPいくらというのを算出して数字を構成しないと正しい答えにはならない。そうなると地方局のスポットは激しくリーズナブルなので、実際にはこの比較の数字はまったくもってアテにならなくなる。

整理すると、YouTubeとテレビのコスト換算を(TRPだとかデモグラの違いとかを忘れて)換算するのであれば、

1)YouTubeのTrueViewの地域別配信比率を案出する 2)それぞれの地域の視聴数を算出 3)それぞの地域のスポットのコスト、GRPいくらを出す 4)1)とか2)の比率に合わせて3)をかけあわせてみる 5)各地域のテレビのスポットのコストを加味し、YouTubeのTrueViewのコストとを対等に照らし合わすことができる。

ってことだと思うんだよね。

ちなみに、

■TrueView インストリーム広告を活用し、投資対効果高くターゲット層にリーチ

という記事なんかもあるわけですが、首都圏と地方ではテレビのチャンネル数も違えば、視聴形態/視聴時間帯も結構ちがったりするわけなんだけれども、どうもYouTubeとテレビの組み合わせで「テレビに届かないターゲットに届きます」って話ってのは、首都圏の状況を前提として話されたりしてんじゃないかな、と思うこともしばしば、です。

さて、僕が思うのは、テレビとYouTube、これは広告枠としてはどちらがどちらかに置き換わるものではないのだろうな、ということ。 むしろ、テレビとYouTubeの組み合わせは悪く無いと思います

※但し、テレビとYouTubeではメディアの視聴態度が違うので、lean forwardなメディアであるYouTubeの場合、prerollな広告は邪魔なもんに過ぎないと思いますが。ちなみに lean forward/lean backの簡単な理解はこちらでどうぞ。

ただ、テレビでスポットを買おうと思うと、ほんと大量買いじゃないとダメなんです。1本いくらで購入できない。 だから、中小企業とかだとよっぽどじゃないとできないわけですよ。

そんなところから考えると、YouTubeの広告枠の価値は、テレビスポットを出すほどの予算がないところでも動画を使った広告で勝負ができる、ということにあると思うので、実は本件であげたブログのようなYouTubeとテレビとの比較はあんまし意味がない、いや、違うな、そこを話をしてもつまらない。

かつてGoogleのAdWordsが、地方のカニの販売や羽田空港の駐車場のビジネスの売上をぐんとあげたんだ、という逸話と同じように、どうせなら、いわゆるブランド、ブルーチップな会社がYouTubeつかって成功したとかいう話ではなく、ローカルの中小企業がYouTube使って認知度上がって売上向上!みたいな話になるような方向にしてほしい。ないしは、大手企業でもスポット打てるほどの予算が与えられてないような商品とかサービスのマーケティングとかね。

だって、インターネットだよ?YouTubeだよ? 非常に民主主義的なマーケティングができるプラットフォームが手に入った世の中で、地方や中小といったところが全国に勝負できますよ、みたいな、なんか懐かしい感じのほうが、いいマーケティングのケーススタディが生まれるような気がしませんか?

でもね、やっぱりTrueViewだとかInStreamってコジャレた名前ついてるけど、いやならスキップどうぞただし5秒だけガマンせえよ、なんていうpreroll動画広告は、人々のコンテンツ消費行動の邪魔をするマーケティングであって、情報がただでさえ多い時代には相応しくない「アドテク」じゃないか、とはほんと思います。

というわけで、株式会社マーケティングエンジンでは、すでにこっそり、某動画マーケティングプラットフォーム、しかもインバウンドマーケティングの応用、みたいなのをすでに試験的にこっそり売り始めていたりします。

photo credit: Funky64 (www.lucarossato.com) via photopin cc