サイバーエージェントが時価総額で電通を抜いた、ってニュースが話題でしたね。
この事実がコロナ禍だけでの一時的な出来事なのか、それともずっと続くものなのか、それは現時点で語るだけの充分な思考に行き着いていない。
そもそもサイバーエージェントは広告代理店というよりも、ゲームやメディアビジネスを展開している、広告代理店の機能を持ったデジタルカンパニーなのであり、広告代理店の文脈だけで語るにはもう足りない。なので、時価総額と言っても「広告事業」に関する部分だけでサイバーエージェントが電通を抜いたのかといえば、そこには「?」がつく。しかしながら、以下の動画を見ると、時価総額の話をいったん横に置いておいたとして、確かにサイバーエージェントは電通や博報堂を抜いたのではないか?と思わされる部分がある。
自分は2000年代に博報堂・電通の両社に所属し、初期のデジタル広告クリエイティブに関わって当時のクリエイティブの重賞をそれなりにもらっていた身。その身から、最近のサイバーエージェントのクリエイティブチームの試みを見ると、当時の僕らがやっていた試みや知見、そしてその頃抱いていた未来の広告クリエイティブのビジョン(つまり今起きていること)は、博報堂や電通ではなく、業界の後輩である内藤貴仁を通じてサイバーエージェント内に引き継がれ、そして花咲いてるように感じる。
事実、当時の電博では支流や亜流ですらなかった僕らの話をもっとも聞いていたのが彼、内藤貴仁であった。電博の中にはなかなかデジタル広告の未来を追求しようという人材もいなかったし、そういう環境もなかった。あったのは、マスとデジタルの組み合わせという思考や、コミュニケーションプランニングという枠組みにおいてであって、デジタルに特化したクリエイティブへの追求ではなかったように思う。
つまり、あの人やあの人やあの人や彼や彼や彼女とか僕らの頭の中や目線を引き継いだ人々は、残念ながら電博には見当たらない。
しかしながら、あらゆるメディアがデジタル化する中においては、デジタルのクリエイティブの知見は、これまでのメディアの枠組みを飛び越える。
たとえば「運用型広告」という表現では今までで従来型広告をやってる立場からすると、広告とすら認識をしないかもしれない。あるいは、単なる販促的な領域だと。しかし、「運用型広告」というのは、実は「ターゲットリーチの最適化」と「クリエイティブの最適化」によって効果を高めるものなのであって、あらゆるものがデジタル化されるのであれば、ブランディングにおけるクリエイティブももちろん最適化されていく。
そう考えると、「あぁ、サイバーエージェントは、時価総額だけでなく、クリエイティブにおいても、すでに電博のクリエイティブを抜いてしまったかもしれない」と思ってしまうのである。