ネット広告はほんとこのまま行くとゴミばかり(いやすでにゴミばかりとも考えられるが)と言われるが、実際には広告だけの問題ではなく、広告枠が掲載されるメディア側の問題もある。つまり今のネット広告には、メディア側の質による問題と、広告側による質の問題、その両側面がある。
今のネット広告の問題(その1):メディア側の質が低いからブランドに対するブランド毀損が起きるという側面
概してネットはメディア構築の参入障壁が低いため、記事の質が悪かったり、時にはフェイクな記事、パクリ記事を堂々と乗せるメディアが多数出現してしまっている。それらのメディアはセンセーショナルでバズる記事で集客し広告収入を得ようとするので、ことの真偽などは関係なく、単に人々が読みにくればいいという姿勢をとっている。
これらのメディアは、マネタイズのためにアドネットワークを通じての広告枠を多数設置している。
それら広告枠に対して、ブランド企業がアドネットワークやプログラマティックでキャンペーンを展開したときに、質の悪いメディアの枠に広告表示される可能性が出てくる。
これが、ブランド毀損の問題として危険視されている。
今のネット広告の問題(その2):広告側の質が低いからメディア側へのメディアブランドへの毀損が起きるという側面
今のネット広告の問題としては実はこっちが大きい。まずクリックされやすいように(Click baitのための)フェイク広告を作る広告主・代理店・制作会社がいる。そこで作られた広告クリエイティブが、プログラマティックやアドネットワークを支援する広告代理店によってキャンペーン設定される。次に配信会社などが設定されたキャンペーンを審査するのであるが、a) 審査通ったあとにクリエイティブや飛び先を変えるというひどいケースもあるし、b)配信会社が審査できる量を圧倒的に超えるクリエイティブが入稿されて追いついてないというケースもある。c)また場合によっては、法律的に、ないしは倫理的によろしくない広告クリエイティブであったとしても、売上のために微妙な広告を受け入れている広告配信企業もある。結果として、それらの広告枠を入れているメディア側は、メディアエンゲージメントの毀損が起きるかもしれないが、そもそも広告について興味のない人が多すぎるのが問題。
この(その2)の場合は、広告配信プラットフォーム側で食い止める術を持っておかないと、メディアの信頼性を既存することになるので早めに対策を講じないといけない。
ただ一方で次のようなことも起きているが、これはプラットフォーム側だけで対処するのは難しい。
上記は、SEO業界では有名な”MOZ”のRand Fishkinがツイートしていたもの。SmartSearch101というところがRandの画像を、taboolaとAdRollに出稿しているキャンペーンに許可なく使用しているらしい。taboolaやAdRoll側のようなプラットフォーム側だけでは、さすがにこの画像の権利がどこの帰属しているかを把握するのは難しい。プラットフォーム側でこれを防ぐことは非常に難易度が高い。
上記のRandのケースは、NHKが報じた「フェイク広告」と同じ構造である。
もし広告にかかれているテキスト、あるいは其のリンク先に書かれている内容が薬機法に違反しているのであればそれらをtake downしたりbanしたりすることはプラットフォーム側でも可能だろう。しかしながら、芸能人の写真を使っていようが、それを一つ一つ権利を確認していく作業がプラットフォーム側でできるか?というと正直結構現実味がないだろう。
いずれにせよ(その2)のケースは、
1)プラットフォーム側で対処すべきこと、と、2)そもそも倫理観の低い広告代理店やアフィリエイターをどう排除すべきか?罰するべきかという問題に行き着く。
2)についてはもう、日本版のFTCを作る以外に手はないんじゃないかと思う。
一方で1)については、テクニカルな側面で解決することや人的・運用的に解決することはできるのではないか?と思うのだが。