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『Viewability が普及するとネット広告の価値はどう変わるのか?についての短文』についての追記

昨日投稿した、

『Viewability が普及するとネット広告の価値はどう変わるのか?についての短文』

について、何が何だかわからない、ということのために以下を記しておきたいと思います。

1)そもそも" impressions "ってなんだったのか問題

あまり知られてませんが(というか業界内部でもこのことを知らない人がまだまだいる)、この" impressions "というのはその言葉の意味するところと違い、「ユーザーに広告を表示している」ことを指している言葉ではありません。今まで" impressions "と呼ばれてきたものは、別名" served impressions "と呼ばれるもので、広告サーバー(ad server)側にリクエストされ、配信された(served)広告の数のことを指しています。従来広告サーバーがカウントしてきたのはこの数値です。この時、表示されるべき広告が全てサーバーからロードされきっているのか、あるいはエンドユーザーが見える状態で表示されているのかというのは加味されていません。

つまり従来の" impressions "については「表示されていないにもかかわらずカウントされている」という状態で、広告主側の不満も大きかったのです。とりわけ、日本以外の、CPM(1000回表示あたりの広告単価)でやりとりされる米国などの市場では、「エンドユーザーに見られていない可能性がある広告に金を払う」ことへの批判は長年に渡って起きていました。この点は、CPC志向の広告が「クリック詐欺」を気にするのと同じようなことといえましょう。また、日本で本件が米国ほど話題になってこなかったのは、日本はCPCよりのデジタルマーケティング市場になっていたからだと言えなくもないと思います。

さて、そのような状況の中、 The Interactive Advertising Bureau (IAB)Association of National Advertisers (ANA) 及び、 American Association of Advertising Agencies (4A’s) という広告に関わる三大組織が一緒になって、これを打破しようと動きだしました(IABは日本で言うJIAA 日本インタラクティブ広告協会、ANAはJAA 日本アドバタイザーズ協会、AAAAはJAAA 日本広告業協会)。この取り組みのことを3MS: Making Measurement Make Senseと呼びます。

この3MSは、まさにディスプレイ型の広告の価値を再定義しようというために作られた施策であって、その中に広告業者と広告主が一緒に行っているということは現状の日本と大きく違うところですね。

で、その3MSで再定義されているのが" impressions "を、" served impressions "から" viewable impressions " にする、ということです。

この viewable impressions は、

「広告の50%以上が少なくとも1秒以上”見える状態”で表示されていること」

と定義されています。

 

2)今後、広告業界に与えるであろう影響

一つには、広告主側から viewable impressions のレポートが求められる可能性があります。実際どのぐらい表示されているのだ?と。

これはCPMだけなくCPC重視の広告にも影響してきます。面白いことに、今まで CTR/CVR は、served impressions を分母にしていたわけですから、これが viewable impressions (以下vImp)となると、分母の値が小さくなるわけで、CTRやCVRの数値が上がります(笑)。まぁ見かけ上ですが。

とはいえ、たとえCPC型の広告キャンペーンであろうと、エンドユーザーに見える形で広告が表示されていなければ当然クリックも得られないので vImp の話はCPC/CPM限らずに重要です。

「クリック課金だから関係ないよ」ってことにはならないわけで、一方で「CTRが低いのは表示されてないからだった!」ということがわかり、媒体側にとっても広告枠の位置の改善などにつながり、また表示されない広告枠を削除することで、広告収益の最適化につなげることができます。

※ちなみに動画広告に関する viewablity についてはまだまだ議論されている途中です。

次に、CPM課金について考え方が変わる、特にプレミアムな媒体/広告枠の考えたが変わる可能性があるということです。

これまでは served impressions でCPM課金(≒PV課金)をしていたわけですが、これがvImpになると、vCPM(=viewable CPM)課金になる可能性があります。こうなってくると、CPMよりもvCPMのほうが数値は小さくなるので、vCPMの単価をCPM以上にしないと広告収入がドカンと減る可能性が出てきます。

しかしながら、『Viewability が普及するとネット広告の価値はどう変わるのか?についての短文』において書いたのは、この状況をネガティブにとらえるのではなく、むしろポジティブにとらえることができることができるのではないか?ということであり、ある種の提言です。

ネット/デジタルの広告というのは、他のメディアにおける広告と違い、エンドユーザーによって”引き出されなければ”表示がされません。つまり、その観点からいくと served impressions もエンドユーザーによって広告サーバーから”引き出された”広告だったわけですが、それが今回のムーブメントで「ちゃんと見える状態で表示される」ということになるわけですから、「表示の保証」という面では他の広告よりも数値として正しく取れる方向に進みます。

もちろん、テレビや新聞などの他のメディアとくらべてサイズも表現力も乏しいと言われるかもしれません。しかし、そもそもメディアに対する接触態度も違えば、ネット/デジタル表現というものも従来のメディアと比べるのも違うのかもしれないわけで、単純にクリエイティブの問題であーだこーだというべきものではないとも思います。重要なのは「見える状態で表示されているかどうか」という”媒体が枠として保証する=見られる機会の提供 Opportunity-To-See"ということに関わってきます。

このことは”質の高いオーディエンスを持っていて、viewabilityの高い広告枠を提供している”媒体は、収益向上のチャンスとなるということになります。

例えば、アドネットワーク頼みだと、1)デマンド側(広告主・代理店側)の要求金額で、2)しかもそれは媒体の特性を加味せず他の媒体と平準化された広告料金でしか売買されない、ということを好ましく思っていない媒体関係者も多くいると思います。しかしながら、viewablityの導入は、逆説的ではあるものの、むしろテレビ・新聞・雑誌の旧来の人的営業スキルが活きる事態を迎えるので、むしろ direct sales と呼ばれる人的営業を媒体社は増やすべきでしょう。そしてその先にはそれをオンライン取引化する Programmatic Direct の時代が待ってます(もう少しかかると思いますが)。

この傾向を考えると、(DSP側でなく)広告サーバーやSSP側は vImp への対応は必須であり、また媒体社はvImp時代のビジネスモデルを変化させる(広告単価の考え方を変える、売り方を変える、広告表示のあり方を編集とともに考える)ことが求められます。

手前味噌にはなりますが、私が関わっているネイティブ広告の世界は、広告主が求めるviewablityや媒体社にとってのビジネスモデルの変化などを最も押しすすめ、両社を強烈にサポートする領域なのです(だからこそ、次のデジタル広告の世界を見据えて、私は Sharethrough の日本の代表をやってます)。

簡単にまとめると、viewabilityの導入はあらゆる側面で、ネット広告のアップグレードだと考えています。

まだまだ viewablity が巻き起こす可能性については話が付きませんが、とりあえずこの上に書いたことまでは、基本的な変化として、皆さんに共有したいと思います。

 

ここからは宣伝です。

その1:ネイティブ広告はこういった時代にあってるので。

それと、すでに viewablity / v impressions にも対応していて、programmatic direct にも対応していて、direct sales にも対応していて、媒体社と広告主の両方をサポートできるネイティブ広告プラットフォームは、現状 Sharethrough しかありません。もしネイティブ広告によるマネタイズに興味のある媒体社様がいらっしゃいましたら、こちらが問い合わせページとなりますので、ご連絡ください。

Sharethrough 日本語問い合わせページ

※広告主の方でネイティブ広告に興味のある方もぜひ。

その2:コミュニティをやってます。

※本ブログの姉妹コミュニティがあります。より早く、より濃く、よりインタラクティブにmediologicにあるようなマーケティングや広告、デジタル関連ビジネスなどの情報が欲しい方は、以下のコミュニティへの参加検討もどうぞ。

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