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人々がつながるためのマーケティング〜Tribal Marketing 再考

"tribe"とは、血縁地縁などでつながる「部族」のことを指す言葉だったけれでも、今から10年ぐらい前に、いわゆるデモグラフィックなターゲットセグメントからの脱却として、ある趣味、興味関心で集まる人々の集まりを表す言葉としてマーケティングの世界に使われるようになった。日本では「トライバルメディアハウス」という社名としてぐらいしか知られてないだろうが、海外では Omnicom Group の DDB は早くから、"Tribal DDB"というデザインとインタラクティブの領域に特化したエージェンシーを作っていたり、一定の理解を得られている言葉である。

この tribe というのは次の2つのポイントで、現在のマーケティングに活かす考え方としてマーケターは理解しておくべきだ。

1)ソーシャルメディアなどで人々がつながりやすくなった時代の”集団”の捉え方として。

一般的に、従来のターゲットのセグメントの捉え方は、大きなかたまり(mass)を対象にしたり、重要なターゲット層を導き出すためのものだったと思う。これはある意味、マーケター側に都合のいいサイズの人々のかたまりを見つけ出すためのもののように思う。「かたまり」と書いたのは、セグメンテーションというのは、マーケターやリサーチャーによって分類されるものであって、その「かたまり」の中にいる人々がつながっているかどうかは全くもって関係ない。

一方で、tribeという捉え方は、人々がつながっている集団であることが前提となる。興味関心で人々のつながりは、インターネット(やパソコン通信)が普及する以前の世界では、時間や場所の制約が多かったため、非常に限定的なものであっただろう。しかしながら、インターネット上のコミュニティが時間や場所の制約を超えた人々のつながりを作れるようになった。そしてソーシャルメディアが出てくると、同一の興味関心を持つような人々とのつながりがより作りやすくなり、より活性化されている。

こうした興味関心によってつながる集団は、企業担当者によって”セグメント”されているものではない。そうではなくオーガニックに人々が結びついている。それを理解し、マーケティングに活かすためにも tribe というキーワードを理解しておくことは大事だろう。

2)マーケティングをなんのために行うか?その視点を変えるために。

上記のビデオでも紹介されているように、従来のマーケティングは、人々に対して商品などを知らせるためのものだった。 それに対し、これからのマーケティングは、人々がどのように生活をよくしていくのか、そのためのものでなければならない。

企業側が人々のことを受け身な存在としてとらえる限りはマインドセットの変化は訪れない。もう人々はアクティブでもっとつながりを重要視している。そういう状況に企業のマーケティングはどう変化していくべきか。

例えば、企業のマーケティング活動がいかに人々のつながりを作り、関係性をよくするのか、そこに企業がどのように関わることができるのか、それを考えること。それが Tribal Marketing のキモ。

このような視点は今後もっと重要になってくると思う。

photo credit: stien via photopin (license)