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B2Bスタートアップはセクシーか?

Why B2B Startups Are Suddenly So Sexy | Inc.com.

上記は、Inc.com よりの記事。 B2Bのスタートアップが、B2Cのスタートアップよりも急に魅力的に思える瞬間があるという。

HubSpotの創業者であるBrian Halliganは、以前VCのメンバーだった時の話として、B2CとB2Bのスタートアップを評価するときに、B2Cに対してB2Bのほうの価値を数倍高く見積もっていて、B2CのビジネスよりもB2Bのビジネスのほうが「カタい」と読んでいたと言っていた。

一方で(特に日本では)B2Bのスタートアップは、B2Cのスタートアップに比べて圧倒的に少ないように思える。また、B2BスタートアップはB2Cスタートアップに比べて、シードレベルであってもレイズがなかなか難しい。

昨晩、Klout.com のCEO/Cofounderである Joe Fernandez の来日に合わせて行われたプライベートパーティであるVCと意見交換をしていた際に、、この状況がなぜ発生するのかということがわかった。それは至極シンプルなことではあるが、次のようなこと。

1)B2Cは、ユーザーをとにかく集めてそれをマネタイズ(といってもほとんどが広告ビジネスモデル)するというシンプルなモデルがVCにも分かりやすい。もちろんそれがうまくいくかどうかは別だが(というか広告ビジネスモデルは厳しい)一方、B2Bは業界のことがわからないとビジネスモデルすら、理解されにくい。

2)スタートアップはリスクと考える人が多いので、まだリスクが少ないと考えられる20代〜30代前半の若い人のスタートアップが結果として多くなる。ただ、その年代だと社会人経験がまだ足りないので、B2Bスタートアップのビジネスモデルを考えるに至らない。

3)B2Bスタートアップについては、対クライアント企業の開拓がもちろん重要になってくるが、若い世代にはそれはタフ。それを解決するにはある程度の社会的実績を持った人を雇い入れるというやり方(わかりやすい例→ GoogleのEric ShdmitやFacebookのSheryl Sandberg)があるが、日本には中堅どころにスタートアップ/IT/経営/マーケティングなどがわかる人が少ない。

こういった背景があるのだろう。

僕が昨年来はじめているビジネスは、インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティング、B2Bマーケティング支援といった、B2Bスタートアップである。もちろん多くの広告ビジネスは企業を相手にするB2Bのビジネスではあるが、その源泉となるものは、Consumerが集まるメディア枠の売買によるもので、その実態はB2B2Cのモデルなのであって、ピュアなB2Bモデルではない。一般的に広告ビジネスモデルとして説明できるB2B2Cモデルは非常にわかりやすいが、一方B2BないしはB2B2Bモデルは理解されにくいし、あるいはそもそもそこにマーケットがあることすらピンとこないケースもある。

さて、スケダチではなく、別ブランドで新しいビジネスをはじめたのは、日本のB2Bマーケティング市場は(僕の感覚では)諸外国よりも5年は遅れていると感じ、(もちろんインバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングはB2C市場にも活用できるが、主戦場となるであろう)B2Bマーケティング市場を活性化させることが必要であると感じたからでもある。

これについては以下のようなポイントにまとめられる。

1)従来のB2Bマーケティングサービスは、一部のクライアント企業に言わせれば「名寄せ屋」であり、”マーケティング”ではなく、集めた名刺をもとに lead nurturing の名の下に実際にはスパム化するメールなどを使い”営業支援”を行うもの。実際には lead generation についてはセミナーや展示会だよりで、それはクライアント企業側の努力であって、その領域のサービサーは皆無に近い、と言われる状況。

2)ご存知のように、日本の大きなメーカーもB2CのビジネスからB2Bのビジネスへの移行を進めているケースが増えてきており、そうなってくるとその主戦場は国内市場ではなく、海外も含めた市場となり、競争相手は必然的に海外の企業となる。そうなると、今までの日本における”B2Bマーケティングサービス”だと役に立たないとうこと。

3)広告ビジネスは主にB2C市場のもの。媒体が集めたオーディエンスがいて、そこにリーチする権利を広告枠などの形で買うのが広告ビジネス。このモデルでは、B2B企業のように、そもそも自分たちがリーチしたいオーディエンスを抱えている媒体がないことが多く、広告を活用することは難しい(そして結局は展示会だよりになる)。

など、B2Bマーケティング市場には課題があり、それを解決する必要がある。

この課題を解決するにあたり、インターネットを中心としたデジタルテクノロジーの進化は様々な解決策を与えてくれる。しかもそれは、単に技術の変化だけでなく、それによって起こっている人々の情報行動の変化の結果、可能になった解決策だ。

例えば広告というビジネス含む従来のマーケティングの多くは、企業側のたてたスケジュールに基づいて行われるが、検索やソーシャルメディアなどを通じて起こる人々の情報行動はあくまでもユーザー側の興味関心や課題解決のタイミングで行われる。

こうした人々の行動変化が、展示会やセミナー、名刺の名寄せ頼りだったB2Bマーケティング/B2B営業支援の世界に大きなチャンスをもたらしているのは間違いなく、こうした観点からのスタートアップが、マーケティングサービサーであれ、プラットフォームであれ、もっとたくさん出てきてもよいはずなのだが。。。

電通が毎年出している”日本の広告市場”というデータにおいても、ここ何年も広告ビジネスの規模はあまり伸びていない。しかし実際には、”広告が関係ない分野”におけるマーケティングテクノロジーの市場は伸びていて、それは従来の広告インベントリーの掘り起こしばかりに向かっているアドテクノロジーの世界と比べて、新しい市場を生み出しており、それは広告の世界と比べて、B2B企業も含めて享受できるテクノロジーやサービスが多くなってきているからではないだろう。

なので、B2Bマーケティングの市場というのは今後伸びる可能性が高い市場だと踏んでいる。まだまだ開拓されていない土地が広く存在していることに気づいていない人々が多いし、地味だけど成功がわかりやすいのがB2Bマーケティングのビジネスなので、株式会社マーケティングエンジンのほうは、B2Bマーケティングスタートアップとして、市場を活性化/変革する存在でありたいと思う。