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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

ナビゲーショナルな需要喚起メディアとしてのソーシャルメディア:mixi meetup 2010のディスカッションより。

先日行われた mixi meetup 2010 のセッションで僕が受け持った、 『ソーシャルメディア×マーケティング』に関するディスカッション。 その35分の内容、+高広の意見をいかにまとめました。

テーマは『ソーシャルメディアはマーケティングになぜ貢献するのか』、と設定。

なぜこのテーマなのか? 僕はどうしても今の”ソーシャルメディアマーケティング業界”が、「ソーシャルメディアを使って何かしよう」というムーブメントに見えてしょうがない。 つまり”全く新しいものだから、ちゃんと理解しておかないといけません。やらなくちゃいけません。”といった風潮がどうも好きではない。

もしマーケティングに貢献するのであればむしろ、 「既存のマーケティング活動の中で、理想としては行ないたかったのだけれども、実現できなかったこと」を背負うツールとなるはず、というのが僕の考え方。

例えば、むかーしからネット関連の施策をやってると 「なんでネットが必要なの?」 と言われる機会を何年にも渡って経験してきてるわけで、その際に「新しいから」じゃ通らないし、長続きしないことを知っている。

で、もっと本質的なところは何かと、 ”マーケティングのミッシングリンクはどこか?” を考えるようになってきた。

そこで僕が発見したのが、以下の図式。

[ マスメディア=興味喚起 ]→[ SP=販売促進 ]

いやちょっと待てよ、TVCM見たからってそのまま店頭行ってくれないよな? それほど記憶に残って買いに行ってくれるか?と。

ということでもしかすると理想的には、

[ マスメディア=興味喚起 ]→[ カタログ?=理解促進・興味補強 ]→[ SP=販売促進 ]

なんじゃないか、と。

となると、WEBサイトの役割として真ん中がすごく貢献できる! つまり、理想的なマーケティングプロセスを実施するためにミッシングリンクを埋めてくれるんじゃないか、と。

そう考えて以来、僕の中では、WEBサイト、特にブランディングサイトやスペシャルサイトと言われるものの役割を、理解促進・興味補強に取るようになってきた、という経緯がある。

さて、長々とお題の経緯を書いたワケですが、mixi meetup の際の、

『ソーシャルメディアはマーケティングになぜ貢献するのか』

も、全く同じ考え方から出てきています。

とかくソーシャルメディアマーケティングに関する言説については、特に、”ソーシャルCRMだ”、”エンゲージメントだ”、”キズナだ”って話が多いわけですが、そもそもメディアやツールというものを、なんらかの使い方”だけ”で規定してしまっていいんでしょうか?このあたりはトライバルメディアハウス代表取締役社長の池田紀行氏ともよく議論するテーマなんですが。

加えて、業界人本能的に、

”顧客維持ビジネスでは大きなマーケットにならない。少なくとも市場が大きい”広告”に関する予算の投下対象にはならない”

という直感が働いてます。

また、広告主は”検索連動型広告疲れ”というか”ターゲティング広告疲れ”をしています。少なくとも僕の周りでは、多い。

で、広告主は何を求めるか。

それは「需要を喚起する・創出する」ための広告/メディア/ツール、なんですよね。

なので、ソーシャルメディアもそのような広告主のニーズにどのように貢献するかを考えれば、そこに大きなビジネスチャンスがあるんじゃないか、と。

そういうバックグラウンドでのテーマ設定だったわけです。

そこで、ひとつ出てきたフレーズが

『ソーシャルメディアは、需要を創出するナビゲーショナルなメディア。』

というもの。

ちょっと理解をしやすいように分類してみます。

・マスメディア = 需要を喚起するためのマーケティングツール ・ソーシャルメディア = 情報を拡げる可能性を獲得できるマーケティングツール。 ・検索連動型広告・行動ターゲティングなど = 需要が明確化している人を”刈り取れる”ツール

特に、ソーシャルメディアが「ナビゲーション」というのはディスカッションテーブルにいたアイスタイルの吉松社長の口からでた言葉で、僕も同意です。

この「ナビゲーション」が有効なのは、ソーシャルメディアでは相手が誰だかが明示されている結果、その情報の「信頼性」それに比例する、ということにあるでしょう。

例えばこれまでは「新聞」は”世に出すべき情報が選ばれて”書かれているという共通認識のもとで「信頼性」の高いメディア、とされていました。でもなぜ「信頼性」が高いのか、については普段判断なんてしない(なので極端な場合「新聞に書いてあることなんて嘘ばっかりだ!」なんていう研究者や批評家が出てくる笑)

これがソーシャルメディア上では”顔の見える”ないしは”正体が分かっている”人からの情報となっており、その「信頼性」を判断しやすいわけです。

ここで重要なポイントがあります。

”人は、(どうせなら)正体がわかってる人から説得されたほうがいい”

と思ってるんじゃないか、ということ。

よく「自分ごと化」という言葉を最近耳にしますが、そうなる前にはそのキッカケが必要なわけでそれはおそらく「外部刺激」によるもの。

その時に、

「ナビゲーショナル・メディア」=互いに自分たちの所属グループ(=tribe)で興味のある情報をシェアしあっているメディア

としてのソーシャルメディアが非常に有効で、その理由として、

・ソーシャルメディアは、グラフによる情報フィルタリング機能/ランキング機能

があるのではないか、という。

そうなると、ソーシャルメディアは、

・需要を創出するツール

に十分になるのではないか、と。

ここでもう一度、別の観点からの分類をしてみると、

・マスメディア=需要を喚起するためのマーケティングツール。 ・ソーシャルメディア=需要を創出するマーケティングツール。しかも誰かのコトバを使って。 ・検索連動型広告・行動ターゲティング=需要が明確化している人を”刈り取れる”ツール

とも言えるかもしれない。

・マスメディア:これまでは企業は”タレント”で親近感を獲得した。

これから先、

・ソーシャルメディア:ユーザーの人間関係をもって親近感を獲得しなくちゃいけない。

つまりは、「耳打ち」がうまくできることが、ソーシャルメディアの企画では重要で、そうすれば、もっと「需要喚起」可能な施策が可能になり、結果、広告主も予算を落としやすくなり、業界が潤うようになるんじゃないか、と。

そんな感じがした、たった35分だけれど密度の濃いディスカッション、でした。