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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

「フェイスブックマーケティング」なんてものは存在しない。

ソーシャルメディア界隈、ネット広告業界を中心に「フェイスブックでぜひ御社もマーケティングを!」という「スローガン」でいろんな広告主に「提案」が数多く持ち込まれた2011年の年の瀬ですが、みなさん師走っぽくお忙しいでしょうか?

さて、こうした「フェイスブックでマーケティングを!」の提案の多くが「公式」の運用であったりするわけなんですが、実際のところは「ページ」の提案、「アプリ」の提案ということで、「で?」というものばかり。しかもそのほとんどの提案資料に、電通の「AISAS」の引用、さとなおさんの「SIPS」の引用、「ロングエンゲージメント」の”言葉だけ”の引用、マーケティング3.0の誤用などなど共通するのが非常に多くて、おいオマエら、人の褌で相撲を取るってことわざ知ってるか?と言いたくなることもしばしば。ちなみにこのような状況が把握できるのは、↑の提案sを受けて、もう辟易した広告主から「なんかもっといい方法あるはずだよね、タカヒロちゃん」と声をかけていただくことがこの1年の仕事の3−4割を占めているからです(※ちなみに「タカヒロちゃん」をつけるのはごく一部の広告主です)。

さて、例えば The Next Web の掲載記事の邦訳版、こちらを見てみましょう。 企業がFacebookをフル活用した10のクリエイティブすぎる実例 はい、見ましたか?

他にも最近、日経デジタルマーケティングが「Facebookページ成功10社」をあげていたりしましたし、こうした「成功例」が色んなとこでレポートされてますが、実際のところ、フェイスブック「のみ」を使った「フェイスブックだけマーケティング」での成功事例なんてのはあんまりないんです。

例えば The Next Web の記事にあるのは他のツール群を使って「成功」しているし、日経デジタルマ−ケティングがあげた10社などは「そもそもブランドが立っている」企業なわけで。

前者の場合は、キャンペーン、ないしは恒常的なマーケティングコミュニケーション施策の中にいかにうまく組み込むかの事例であるし、後者の事例は、「フェイスブックによってファンを生み出した」のではなく、「そもそもつながることが難しかった“ファン”を顕在化させ、つながってもらえるようにできるようになった」ということでしょう。後者についてもう少し説明しておくと、今までは「買ってくれた人」はカスタマー化して「クロスセル/アップセル」しやすかったわけです。でも、「ファン」というのは実際に商品を買ってるかどうかにかかわらず、ある商品やサービスに好意を持っている人=「カスタマー前段階」も含んでいるのであって、「購買してくれた人」だけではありません。ここが大きなポイントです。

つまり、ファン>カスタマー、という図式があって、この「ファン」を作るのは、「フェイスブックだけマーケティング」の成果ではない、っていうことですね。

一方で、この2つのケースを前提に、広告主企業に提案しているソーシャルメディア屋さん、ネット広告代理店は意外なことにあまりいません。一部、ソーシャルメディアコンサルタントの資料においては、「ソーシャルメディアはパーツなので、全体戦略の中で位置づけないといけません」とのたまわっているのを見受けますが、そもそも「実施」「企画」ができない彼らがそれを書いて、広告主に提示したとしても、広告主側からすると「わかってらーそんなん、おまえらアホか?そんなことどーでもええし、で、どうしろと?」(←一部誇張)っていう話になるわけです。

※ちなみにネット広告代理店がソーシャルメディアに走るのは、(アトリビューション他も同じですが)、純広、SEO/SEMとアフィリエイトじゃあ伸びないっていう焦りの部分が大きいんですよね。背景には(1)そもそもメディアの数が増えていないので売り物が増えない。(2)広告主もネット媒体の最適な予算配分が見えてきていて、それ以上に「積まない」ということがあります。

このような現状があるから、スケダチという仕事にはますますオファーがいただけるわけなんですが、それはさておき、なぜ皆さん、パーツだったり、他人事のようにしか、仕事ができないんでしょうか? 「やりたくないことはやりたくない」からでしょうか?

提案先が求めている「ソーシャルメディアを使った提案」は、「ソーシャルメディアを使って、弊社のマーケティングコミュニケーション課題を解決してください」という意味であって、その「課題」の発見と解決の提案がなされていないからではないか、とつくづく思うわけです。実際↑であげた提案書を拝見しても、そこの部分が書かれていないものばかりなので。

「フェイスブックマーケティング」、なんてのは存在しないんです。それは売り手側の言葉であって、広告主側にとっては常に「マーケティング」、「マーケティングコミュニケーション」なんですよ。