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メディアと広告とマーケティングと。

「インサイト」って何? それは「潜在的ニーズ」の話でもなく、単なる「消費者理解」の話だけでもなく。

 Facebook上のとある壁で、「インサイト潜在的ニーズって何が違うの?」という一言ではじまった議論が盛り上がっている。 そこでは色んな人が色んな私的定義を書いているが、それぞれに色んな意見があって面白いなと思う反面、なぜそのような事が起きているのかを考えた。もちろん日本語化しにくい言葉であるという側面もあるだろうが、マーケティングコミュニケーションの文脈で話をしているのに、単に(一般的な insight の訳語としての)「洞察力のこと」なんて言ってしまう人も見受けられるので、ちょっとまとめておく。で、恐らく「インサイト」に対する混乱は次のようなものだ。
  1. そもそもマーケティングコミュニケーション領域における「インサイト」の定義や発生についてみんな知らないし、調べてない。
  2. 潜在的ニーズ」というのは実はどうも「和製英語」であって、これがコトをややこしくしている(*これについては別の機会に書く)
というわけで、以下に説明をしておく。

 

 まず、広告やマーケティングの業界において使われる「インサイト」とは、“マーケティング・リサーチ”の領域からの「インサイト」と“アカウントプラニング”の領域からの「インサイト」の2つの用語がある。
 
 この2つをごっちゃにしてる人が多いので、ややこしい。
もちろん根っこは同じことなんだが。
 
 
 これはそのとおり「(消費者・ユーザーなどの)深い理解」を指す。従来的な定量的な調査への発展的批判から、定性的に見られた内容、そしてビッグデータなどの駆使から、今までにない消費者理解が得られるようになってきていることから、「インサイト」という言葉がより使われるようになってきてるように思う。つまりこの場合の「インサイト」というのはマーケティングインテリジェンスの一つだ。
 
2・アカウントプラニングにおける「インサイト
 
 “アカウントプラニング”とは広告会社のクリエイティブや企画の手法の一つ。従来の(ストラテジック)プランナーなどの立てる戦略が企業側の視点であったことへの批判から、“アカウントプランナー”と呼ばれる職種が生まれた経緯がある。この“アカウントプランナー”職は一部のデジタル系広告ビジネスの中では、「あるアカウント(=広告主)への企画担当」として設定されており、そもそもの英国発祥の“アカウントプランナー”とは別の意味合いになってしまってるからややこしい。
 本来の“アカウントプランナー”の役割は、“消費者の代弁者”としてクリエイティブチームにブリーフィングを行ったりすることもの。繰り返しになるが“企業の代弁者”であった従来のプランニングに対し、消費者の視点からのプランニングを行う役割を担う。企業側のメッセージがいかにうまく伝わるかがこれまでのやり方だったわけだが、メディアの多様化や消費者のライフスタイルの変化など、よく言われる社会変化によって、なかなかメッセージが伝わりにくくなった。そこを発想転換して、いやいや待てよと、「企業の代弁者」ではなくて「消費者の代弁者」としてあるブランドや商品を使う理由を考えてみたらどうなの?ということを考えるためにでてきたのが、アカウントプラニングにおける「インサイト」であり、消費者がブランド・商品を買う理由、しかも消費者も顕在的には気づいていない可能性もある理由のことを指すのだ。こちらが広告業界で使われるような意味合いでの「インサイト」。
 
 たまに、「インサイトを発見する」というのは「潜在ニーズを見つける」ってことじゃないの? という話をしてる人を見かけるが、あまり正しい理解ではない。
 
 というのも消費者の「ニーズ」というのは、必ずしもブランドや商品に向かうものではない。つまり、潜在的なものであったとしても、顕在的なものだったとしても「ニーズ」があるからといって、それはブランドや商品を買う理由にはならないのである。そこで、その「ニーズ」と「ブランド」を結びつけるものは何なのか?というとそれが「インサイト」と呼ばれるものである。
 
 マーケティングリサーチの「インサイト」とアカウントプラニングの「インサイト」の2つの共通点はどちらも、Something has not been able to be seen/expressed before. つまり、まだ見つかってなかった・表現されてなかった何かだということにある。
 
 特にアカウントプラニングにおける「インサイト」とは、「消費者の頭のなかにある、買う理由やきっかけになりそうなんだけれども、まだ見つかってないこと」ということであって、マーケティングリサーチの「インサイト」がリサーチをしている側にとって「まだ見たことないもの」なのに対し、アカウントプラニングの場合はむしろ「消費者にとって(頭のなかにあるけれども)自覚されていないもの」を指すという点も違う。
 
 アカウントプラニング側の「インサイト」を簡単にまとめると次のような図になると思う。 
 
 
 
 「潜在的ニーズは和製英語じゃね?」という話については別途書くので、まずは「インサイト」については2つあるよ、ということまで。
 
 

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