コトラー先生の新しい本、その名も『Marketing 4.0』が出た。
Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital
- 作者: Philip Kotler,Hermawan Kartajaya,Iwan Setiawan
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2016/11/17
- メディア: Kindle版
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近代マーケティングの祖であるフィリップ・コトラー先生は、いまから6年前に「マーケティング3.0」という考えを世に出し、これからは「人間 human」を中心にしたマーケティングを行うべきだ!と主張。
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
- 作者: フィリップ・コトラー,ヘルマワン・カルタジャヤ,イワン・セティアワン,恩藏直人,藤井清美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/09/07
- メディア: 単行本
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Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit
- 作者: Philip Kotler,Hermawan Kartajaya,Iwan Setiawan
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2010/03/30
- メディア: Kindle版
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そして遂にその次となる”Marketing 4.0” のタイトルの本が出たので、早速 kindle 版を購入、速攻ざっと読んでみた。
以下、Marketing 1.0 から 3.0 のおさらい。
Marketing 1.0: Product-driven marketing プロダクト重視のマーケティング
Marketing 2.0: Customer-centric marketing 顧客中心のマーケティング
Marketing 3.0: Ultimately human-centric marketing 人間中心のマーケティング
さて、プロダクト→顧客→人間と来たので、EUからの英国の離脱の問題や移民問題、米国の一国覇権の弱体化、近代的資本主義の見直しなど、以下の著作の流れで、Marketing 4.0 は「環境」や新しいグローバリズム/グローカルなどの話を予想していた。
コトラー ソーシャル・マーケティング 貧困に克つ7つの視点と10の戦略的取組み
- 作者: Philip Kotler,Nancy R. Lee,フィリップ・コトラー,塚本一郎
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 2010/01/29
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新著『Marketing 4.0』では、Marketing 3.0からの natural outgrowth として Marketing 4.0が説明されている。その定義は、Chapter 4 の中で以下のように説明されている。
Marketing 4.0: A marketing approach that combines online and offline interaction between companies and customers.
企業と顧客との間でのオンライン/オフライン双方の相互行為を用いたマーケティングアプローチ。
「え。」
正直なところ、まさか・・・という感じである。たしか、4.0は自己実現がうんぬん。。。ではなかったでしたっけ? 次世代マーケティングプラットフォーム研究会でもそう定義づけられてたような。。。でもデジタルトランスフォーメーションの話になってますよ、、、4.0
デジタルの領域のマーケティングをやってきた人間としては、「え?」なのだ。
いや、ある意味、コトラー先生がようやく「デジタル」をマーケティングの領域に認めたという風に考えるべきなのかもしれないが、上記が Marketing 4.0だ!と言われてしまうと、1.0/2.0/3.0はより「概念的」なものだったのに4.0がいささか戦術的な話に思えてしまう。実際のところ、全体としてはトラディショナルとデジタルを融合したカスタマージャーニー的な話がど真ん中だし、文章の中には「Netizen」という言葉が出てきたり、むしろ「デジタルの業界」においては”死語”となってる言葉もちらほら見かける。
読み進めると、4Psから4Csへの再定義そして"5A's"という新しい概念の提示、PAR/BARというマーケティング指標、そして "デジタルとトラディショナルのマーケティングの役割”の図示化など、「使える」部分は多数あるし、こうした権威による”承認”は企業におけるデジタル活用を進めることになると思う。
しかしやはり、たとえば”5A's"は顧客の行動パスを
Aware / Appeal / Ask / Act / Advocate
として定義付けたものであるが、日本であれば「AISAS」とかで聞いたような話に見えてしまうし、また、デジタルとトラディショナルの役割の図などは、2000年に博報堂インらタクティブ局から出た以下の書籍に所収の図に見えてしまう。
図解でわかるインターネットマーケティング―これがスピード時代のマーケティング手法だ!
- 作者: 博報堂インタラクティブカンパニー
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2000/01
- メディア: 単行本
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ずっとデジタルの(マーケティングの)世界に関わってきたものとしては、今回のコトラー先生の著書については、どう捉えればいいのか非常に迷う本であることは間違いない。
一方、デジタルがようやく「本流」に入ることができた、という風にも考えることができるだろう、と。
出たばかりの本なので、これから読む人もいると思うので詳細をコメントするのは避けておきたいが、ざっと上記の感想だけは書いておきたいと思う。
追記)ちなみに本書の目次は以下の通り。
Part I FUNDAMENTAL TRENDS SHAPING MARKETING マーケティングを形作る基本的なトレンド
1 Power Shifts to the Connected Customers 3 繋がりを持った顧客へのパワーシフト
From Exclusive to Inclusive 7
From Vertical to Horizontal 10
From Individual to Social 13
Summary: Horizontal, Inclusive, and Social 14
2 The Paradoxes of Marketing to Connected Customers 17 繋がりを持った顧客たちへのマーケティングのパラドクス
Breaking the Myths of Connectivity 20
Summary: Marketing amid Paradoxes 28
3 The Influential Digital Subcultures 29 デジタルサブカルチャーの影響力
Youth: Acquiring the Mind Share 32
Women: Growing the Market Share 35
Netizens: Expanding the Heart Share 37
Summary: Youth, Women, and Netizens 40
4 Marketing 4.0 in the Digital Economy 43 デジタル・エコノミー時代のマーケティング4.0
Moving from Traditional to Digital Marketing 47
Integrating Traditional and Digital Marketing 52
Summary: Redefining Marketing in the
Digital Economy 53
Part II NEW FRAMEWORKS FOR MARKETING IN THE DIGITAL ECONOMY デジタル・エコノミー時代の新しいマーケティングフレームワーク
5 The New Customer Path 57 新しい顧客導線
Understanding How People Buy: From Four A’s to Five A’s 60
Driving from Awareness to Advocacy: The O Zone (O3) 66
Summary: Aware, Appeal, Ask, Act, and Advocate 69
6 Marketing Productivity Metrics 71 マーケティング生産性の指標 ←この章は特にためになります。
Introducing PAR and BAR 74
Decomposing PAR and BAR 75
Driving Up Productivity 80
Summary: Purchase Action Ratio and Brand Advocacy Ratio 90
7 Industry Archetypes and Best Practices 91 産業の原型とベスト・プラクティス
Four Major Industry Archetypes 94
Four Marketing Best Practices 100
Summary: Learning from Different Industries 104
Part III TACTICAL MARKETING APPLICATIONS IN THE DIGITAL ECONOMY デジタルエコノミー時代におけるマーケティング戦術の適用
8 Human-Centric Marketing for Brand Attraction 107 ブランドの魅力に対する人間中心のマーケティング
Understanding Humans Using Digital Anthropology 110
Building the Six Attributes of Human-Centric Brands 113
Summary: When Brands Become Humans 118
9 Content Marketing for Brand Curiosity 119 ブランドへの興味を作るコンテンツ・マーケティング
Content Is the New Ad, #Hashtag Is the New Tagline 121
Step-by-Step Content Marketing 124
Summary: Creating Conversations with Content 134
10 Omnichannel Marketing for Brand Commitment 137 ブランドへのコミットメントを促すオムニチャネルマーケティング
The Rise of Omnichannel Marketing 139
Step-by-Step Omnichannel Marketing 145
Summary: Integrating the Best of Online and Offline Channels 149
11 Engagement Marketing for Brand Affinity 151 ブランド親和性のためのエンゲージメントマーケティング
Enhancing Digital Experiences with Mobile Apps 153
Providing Solutions with Social CRM 156
Driving Desired Behavior with Gamification 160
Summary: Mobile Apps, Social CRM, and Gamification 165
Epilogue: Getting to WOW! 167
What Is a “WOW”? 167
Enjoy, Experience, Engage: WOW! 168
Are You Ready to WOW? 169