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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

広告業界の「営業」は、存在価値を発揮できなくなってしまっている、と考えるのが事実ではないか?

 業界の大先輩である山本直人さんが、広告代理店の「営業」の存在価値について書かれています。でも、僕はこの山本さんの見立てとは違うなぁ。そもそも「デジタル」の領域だけ切り出して、「営業の存在価値」を語るのはちょっとデジタルまんせー時代により過ぎた話ではないかと。

www.naotoyamamoto.jp

 

 見立てがどのように違うのか、ということについては以下の本にも触れてみてるんですが、 

次世代コミュニケーションプランニング

次世代コミュニケーションプランニング

 

広告代理店の「営業」が機能しないのは、「営業」の問題じゃないんですよ。「営業」という役割や職種の問題ではなく、広告代理店の組織的な問題なんですよ。

実際、今、一番悩みが多いのは「営業」。「存在意義がなくなってきた」んじゃなくって、「存在意義を出しにくくなった」が正解(『次世代コミュニケーションプランニング』で予言したとおりにね)。

 今、広告業界が大変なのは、多様化と専門化の両方が同時に起きてるからであって、社内体制がそれに追いつかず、クライアント課題に応えるのに、営業がどの部署に頼めばいいかわからないようになってしまってること。やたらとカタカナの長いわけのわかない部署が増えて、でも何してるかわからない部署とか、多くないですか?

 

 デジタルの側面だけで見たら「営業がデジタルわかんない」とか言う話にまことしやかに語られてしまうんだけど、本質的なところはデジタルかどうかは関係ない。そもそも代理店には、「デジタル広告」をバイイングと運用できる人間がいたとしても、「デジタル広告」が分かってるかといったら、分かってるスタッフいないし、「デジタルマーケティング」になったらますますますいない、社内に。

 一方で多くの代理店が細分化した(専門特化した、ではない)グループ子会社作って、グループ間での金の内部留保に邁進する一方、外部の専門家を雇いにくくなって、結果として内外含めたベストなスタッフィングが営業にできないということこそが、現在の代理店の課題。まあ、カンパニー/事業部を飛び越えてスタッフを使うのがご法度になってるところもあるし。

 なので、「営業」の存在意義がプロデュースやスタッフィングにあるのだ、というはまさにその通りではあるんだけれど、デジタルが分かる分からないということではないんです。エンタメ業界のプロデューサーが、充てがわれたタレントしか使えなかったらそりゃ大変でしょう、っていうのと同じ。「営業」が悪いんだ、というのは代理店の現状における本質的な問題ではないと思います、はい。むしろ、「営業」が仕事をしにくい(スタッフを選びにくい)状況になってるのが、今の大きな問題だと思いますよ、広告業界の。