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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

第一回販促会議賞、グランプリ受賞者座談会を終えて。個人的雑感。

昨日、グランプリ受賞者の、電通テック クリエーティブ本部の菊池雄也さん(コピーライター)、森康成さん(アートディレクター)、そして博報堂ケトルの嶋浩一郎さんと座談会をしてまいりました。

その座談会の模様は12/1発売号に譲るとして、僕個人の雑感を。

※嶋さんには↑の座談会で開口一番「高広くんは辛口だから厳しいこと言われるかもしれないから」と受賞者の前で(笑)。でもホントは嶋さんのほうがニコニコしながらめっちゃ辛口なんだよねー。実際、会の最後のほうでは”いつもの嶋さん”だったわけだけれど。

■販促会議賞という賞について

この業界には、宣伝会議賞や電通賞、東京インタラクティブアドアワード(TIAA)のような国内広告賞の”重賞”があり、それぞれ歴史的な重みがあり、TIAAですら短いネットの歴史の中でそうなりつつある。これらを目指すことは広告業界のクリエイター/プランナーとして非常に重要なことだし(※僕は賞を”獲り”に行くこと自体は悪いことだと思わないし、たとえ賞のために作られた案だとしても、それが習作となり、今後の経験になるのであるのであればそれでよいと思う。ただ、広告主から依頼されたオーダーに対して”賞”のために仕事をするのは筋が違うよな、と思ってるだけ。普通のことでしょ?)、そこにいろんな広告作品・仕事が集まることによって、普段業務に追われてなかなか見ることができない”他の人の仕事”を見て学ぶ、という機会を提供されることでもある。つまりこれらの賞が存在することは、クリエイター/プランナーのスキルの向上、ひいては業界内でのクライアントソリューションの向上に役立つものと考えている。ただ、一方で上記のような賞は、確かに広く門戸は開かれているものの、それぞれがコピー、CMプラン、インタラクティブ、といった”それぞれ”の領域に関するものであるから、応募者の傾向はそれに紐づくものになってくる。しかしながら今、広告主が求めているものは、メディアや手法で区切られたヤリくちではなく、もっと「シカケ」「シクミ」的なものだったりする。いわゆる「メディアニュートラル」を超えた「手法ニュートラル」な。 販促会議賞はまさにそういう時代にフィットした賞なんじゃないかと僕は思って、今回喜んで参加させていただいた。シカケやシクミが評価される大々的な賞、というのは実質なかったが、この賞がその中での”重賞”となると思う。そしてこの賞、本当に誰でも応募できる。Powerpoint で10ページの企画書さえ書ければ。

■全体を通じて

各応募作を通じて感じられたことを箇条書きで。

・販促会議賞の趣旨にそって、いわゆる”表現”よりも”シカケ”や”シクミ”を提示したプランがほとんどであったことは良かったと思う。しかし一方で、”シカケ”や”シクミ”に溺れすぎ、なぜその商品でその企画をやるべきなのか?に欠けたものが多かったのが残念。 ・企画書の作成レベルはまちまちだった(→賞、と考えたときに、審査員が見やすい企画書を提示することも大事。実はこれは通常の提案のときにも言えること) ・ソーシャルメディアやARを使った企画、がやはり結構多かった。ただ、なぜそれを使うべきなのか、について足りない(→twitterを使ってバイラル起こします、という感じ。でも「なぜバイラルが起こるのか?」について練られていない)。 ・応募者の経歴、現在の職種、所属企業が多様だったのが良い(→でもPR会社などはまだまだ少ない模様。”販促”という言葉にとらわれず、出せばいいのに)。 ・販促会議賞であるにも関わらず、”店頭”をいじった企画が少なかった(なぜ?もっと店頭に注目を) ・”人を動かす”という観点の企画はまだまだ少ない。

などなど。。。

僕は販促会議賞においては、

・それは、人が動く企画なのか? ・それは、商品が動く企画なのか?

という視点を重視するべきじゃないかと思っている。

また単に”売れる”というだけなら色々なインセンティブを付ければいいが、こんな賞であるのであれば、そこは”お得なオマケ”ではなくアイデア”で突破すべきだろう。なので、

・商品が主役になれているか、どうか

というのもポイントだろう、というのが僕の視点。

■受賞作品について

嶋さんは”加算法”で、僕は”減点法”の思考で採点をした模様。 受賞作品の「シークレットメッセージ」については、僕も”企画”としては満点をつけた。しかし「販促会議賞」という枠組みで考えた場合、やはり「次のプロモーション、シカケ・シクミのあり方」を提示するものであって欲しいという思いが審査員の立場であったため、満点をつけなかった。それは「シークレット・メッセージ」の”企画”が優れたものであっても、従来的なプロモーションのフレームにおける”企画”として優れているもの、と解釈してしまったから。この賞こそが、きっと広義の”広告”の新しい姿を生み出す場として考えないともったいない。だからこそ厳しく考えてみた。

「シークレット・メッセージ」は、練られたコアアイデアをシンプルな企画書で表現している点でも非常に優れている。多くの人が「なぜこれをコカコーラ社がすぐに実現しないの?いい企画なのに!」って思うかもしれない。ボトルネックになるのは、普通に油性のインクを使うとペットボトルのリサイクルに不具合があるかもしれない、という部分。販促会議賞では”アイデア”での突破だけではなく、こういった部分もケアしてきて応募してきてもいいのでは?と思う。”よく商品のこと調べてきてるなぁ”というのはプラスでこそあれ、マイナスではないしね。例えば、「シークレット・メッセージ」の場合は、「どこどこの文具企業とコラボし、エコインクを開発し、それを使う」というのが最後のページに書いてあれば、そのコラボの試みも話題になるかも、となるし、商品に対するケアもなされているな、ということで満点にしただろなー、と。

この応募作を見て思ったのが、企画には「小さい企画」と「大きい企画」の両方で考えなくちゃいけないポイントがあるのだろう、ということ。

「小さい企画」というのは「シークレットメッセージ」という”企画”そのもの。 「大きい企画」というのはその”企画”の周囲のシカケ。例えば↑に書いた企業コラボの部分。

他にも審査員がいてそれぞれの考え方があるので、↑がすなわち販促会議賞の審査ポイントと考えて欲しくないんだけれど、僕が”「次のプロモーション、シカケ・シクミのあり方」を提示するものであって欲しい”と考えるのは、この「大きい企画」の部分まで練られているかどうか、ということ。でないと、企画はえてして小さくなりがち。そうではなく、世の中に関わっていくような”企画”であって欲しい。

偉そうに言いましたが、一応審査員の立場なので。

最後に、

僕が広告業界史上、最も尊敬する人物、ジャック・セゲラは次のような言葉がある。

「広告とは事件を起こすことだ」

第二回販促会議賞では、”事件”になるような企画をもっと見てみたい。