しばらく前のエントリーでも書いた("競争は価格だけで起こっているのではない。消費者が買うのは「商品」では、ない。"が、コンビニ界隈でドーナツ戦争が巻き起こってるのは知られているだろう。すでに食べてみた人も少なくないかもしれない。
非常にニュースになっている試みではあるものの、いくつか残念だなあと思うことがある。
例えば、某所の*ーソンではチョコレートのコーティングがひび割れたドーナツがショーケースに飾ってあったり、*ブン*レブンのある店舗では、客にも見える状態でドーナツ購入者に対する手書きの接客TIPSが貼ってあったり、色々と現場のオペレーションが回ってない状態なのだろう。
※あ、ちなみに手に入るものについてはどちらについても全種類食べました。いまのところ*ブン*レブンの「きなこドーナツ」と「ホイップドーナツ」がいいですね。
さて、本ブログはグルメブログではないので、マーケティングや広告の観点からの残念だなぁと思うところを書いておきたい。
↑ の写真は、*ブン*レブンの店頭の風景。
確かに「お試しして欲しい」という気持ちは伝わってくる。また、520円という価格も高くない(魅力的かどうかは別)。
しかしながら、「買いたい」、「食べてみたい」と思うだろうか?
広告業界には「シズル」という目や音などの感覚を通じて、購買欲を湧き立てるという意味の言葉があるが、まったくもって「シズル感がない」。つまり、「食べてみたい」という気持ちにならないのだ。
「話題だから試してみたい」とは思うかもしれないが、「食べてみたい」ということを店頭演出するのに失敗しているようにしか思えない。
ところで、今日は朝からfacebookからのアラートがなにやら主張をしていたので、ふと見てみると、一緒に仕事をしているメンバーが誕生日ということを見つけたので、それを理由に、7個セットを買ってみた。
あまり多くを頼むお客さんがいないのか、明らかに店員が戸惑っていて、あれはどこ、これはどこ状態になっていた。
ここでもオペレーションがうまく行ってない状況を見る。あれま。
で、本ブログは働き方改善ブログではないので、マーケティングや広告の観点からの残念だなぁと思うところを書くということで再びそちらに戻るわけですが、パッケージが非常にもったいない。
まさか ↑ の写真のような「ドーナツお試しパック」などと書いた箱ではないと思ったが、おい、これは今のタイミングではシンプル過ぎてアカンやろ、と。
実際の箱がこれ。
本日お誕生日迎えた某人曰く、「ティッシュペーパーの箱を持ち歩いてるようにしか見えないんですけど」。
いや、花粉症のひどい時なら便利かもしれないけどさ、持ち手付きのティッシュボックスとか。
という話ではなく、「*ブンカフェ」のロゴが入ってるのだけれども、これもシンプル過ぎてわからない。
ところで、「シンプルなデザインを狙ってるのではないですか?」とか「シンプルでかっこいい」という意見がこういうこと言ってると降って湧いてきそうですかね? いや、このタイミングでそういうのは二の次なんですよ。大事なことは、これを持ち歩いてくれるってことは、「購入者が自ら宣伝塔になってくれる」ってことなんですよ。わかりますか?
マーケティングの世界では「バンドワゴン効果」と呼ばれる考え方がありましてですね、スゴくざっくりいってしまうと、「人は流行りモノにのりやすい」ということを表していて、例えば、ファッションブランド、特にカバンの場合なんて、でかでかとロゴがあるものがあるじゃないですか。例えば、kitsonとか。ああいうのは、それを持ってることである集団への帰属意識を得るとか、アイデンティティを構成する一部となっているという言い方もできますが、それとは別に、人は、多くの人が持っているものに惹かれやすいって話なんですよ。「バンドワゴン効果」ってのはそういうヤツ。
なので、「シンプルなデザイン」よりも、話題になってるときに「お、あのドーナツ買ってきたの?」と思わせるようなデザインにしておかないと行けないのですよ、このタイミングでは。
しかもこのタイミングはビジビリティ(目につく度合い)が高くなるので、ますます注目率は高くなる。
非常にパッケージのデザインが重要なタイミングで、このシンプルなのは、無い。
Package as Metaphar (Part3) - Package as Content
上記のブログのタイトルにもあるように、パッケージというのはそれ自体が「コンテンツ」なのであり、これを今風にいえば「コンテンツ・マーケティング」として活かさない手はない。
例えば、多角化戦略で残念な終末を迎えた会社ではあったが、Gateway社のPCのパッケージデザインを思い出そう(といっても若い人にはわからないだろうが)。
この一世を風靡したPCメーカーは、パソコンと同様に箱を店頭にディスプレイしており、当然、家やオフィスに届くときにはこの牛デザインの箱が届く。そして人は「あ!ゲートウェイだ!」って。
あるいは「ビックカメラの紙袋」(がイメージ出来ない人はこちらの記事をどうぞ→ @nifty:デイリーポータルZ:ザ・ビックカメラマン)もそうだ。
どうですか? そういや目にするな、とか、目にした時にちょっと気になるってないですか? 他のケースでも。
パッケージというのは、ひとつの「メディア」として扱うべきなのであって、これはキャンペーンやセールスプロモーションの中に、単に「デザイン」として扱われるのではなく、「機能するマーケティング」として扱うべきなのである。
というわけで、コンビニドーナツ合戦において、広告やマーケティングの経験値から考えると、
- 店頭でシズルを醸成するようなPOPやパッケージ、ショーケースが見られない
- パッケージが、「バンドワゴン効果」を生み出せるようなパワーが無い
というところが、非常に気になるのである。
余談。
今回の店頭とパッケージの扱い方、いかにも流通業界っぽいって感じがしたんですよね。割安感で行きたかったのかもしれませんが、むしろチープ感になってしまっている。
あ、ちなみに先のドーナツは、ミーティングのメンバーで分けて食べました。
誕生日の某女史のドーナツには、32本のローソクを立てようかと思ったんですが、ちょっと無理でしたね。