mediologic

メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

Googleの広告には創造性や新規性・進歩性が無くなったなぁ、とこれを見てつくづく思う。

Googleを離れてはや6年半。

在籍していた最後の頃のGoogleは、AdWordsの管理画面からテレビ、ラジオ、新聞・雑誌の広告をも購入できるような仕組みの開発を行っていたり、また(DoubleClick買収以前に)独自のアドサーバー(パブリッシャーサイドと広告主サイドの両方)の開発、クリエイティブエージェンシーと広告主とのマッチングプラットフォームなどが作られており、"Google Unwired"のスローガンとともに、ごちゃごちゃと複雑になった広告ビジネスを解きほぐし、そして広告主が1ドル払ったらできるだけ1ドル分に近い効果を得るようにしよう、と活動していた。

当時のGoogleには難題を解くのが自分たちの仕事だ、と思っていたような感じもする。

例えば、AdWordsも「ユーザーに取って有益になる広告」という答えで難題を説いたわけだし。

関連してcookieに関しても今でも印象に残っているエピソードがある。

 

もともとGoogleの提供するサービスではcookieの利用は事実上禁じられていた。cookieの利用が認められるのは、"iGoogle"や"Gmail"などでユーザーがすぐにログインできるようにするためとか、ユーザーに取って有益な情報を提供するため、などといった「ユーザーにとって明確な便益がある」とする場合以外、それらをもとにマネタイズを行う(=広告のターゲティングに使うなど)を嫌っていた。そのため、先にあげたアドサーバーの開発チームなどはcookieに頼らない別の方法でのユーザーセグメントやターゲティングを行える方法を企画していたりした。これはいわば、自らに難題を課し、自ら答えを導き出そうとする動きだったように思う。

しかし、DoubleClick買収以降は、同社がすでにcookieを用いた広告配信を行っていた関係でなし崩し的に広告配信でのcookieが社内で認められた。また、YouTubeに関していえば、初期の広告部門のトップ以下広告チームのメンバーは、「プリロールの広告や動画にバナーを載せることなんて絶対にしない」と宣言していた。代わりに、今のネイティブ広告の世界で言われるような、ブランドコンテンツやスポンサードコンテンツ、それらを用いたキャンペーンといったものを重視。ユーザーにとって「嫌われない」、「コンテンツ」としてのブランディングのサポートをしていたのである(そういった意味で、YouTubeの初期の広告ビジネスはまさに「ネイティブ」だった)。

思えばもともとは GoogleYouTubeも「ユーザー視点」を重視しており、だからこそ自らに課す難題を自ら生み出し、解決しようとしてきていたと思える。

 

www.wsj.com

WSJが報じるところによれば、Googleはインタースティシャル広告、すなわちサイトにユーザーが訪れた時に全画面広告が出てくるようにしてある場合、そのサイトをにペナルティを課すことを考えてるというのだ。もちろんこれはユーザーにとってはメリットがあることだから、喜ばしい。

しかし一方で、GoogleAdSenseで今テスト導入されてるのが、以下の様な広告だ。

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アンカー広告と、モバイル全画面広告。。。しかも後者については、インタースティシャル広告との違いは、前に出るか、後にでるかの違い。アンカー広告に至っては、モバイルの画面の下部に固定だ。

Don't be evil. を捨てた会社なので仕方がないかもしれないが、これでは余りにも知恵がなさすぎるのではないか。

ユーザーにとって利便性が高い、とあるが、これはオーディエンスターゲティングやビヘイビアターゲティングにおける広告を出す側の「方便」に過ぎない。よしんば、”利便性の高い”ものだったとしても「表示」による疎ましさは否めない。cookieや広告主側のデマンドによる”ターゲティング”の結果表示される広告を、うまい風に「ユーザーにとって利便性が高い」と言ってるに過ぎない。

今、特にモバイルのような表示情報が限られたネットの世界に突入すると、ユーザーが目にする情報量に対して、広告の表示は何割を占め、そしてそれがユーザーのメディア体験にとってスムーズかどうかを問うことが必要なのに、その線での考慮はなされていないように見え、安易な手法、安易な表現・エクスキューズな広告プロダクトしか出てこないGoogleは、OBとして非常に残念に感じる。