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音楽とオーディエンスの蜜月 ~ unexpected but contextual chance

■ Pandora Internet Radio - Find New Music, Listen to Free Web Radio

意外と知られていない、"Pandora"。

Music Genome Project
というミュージシャンと音楽好きの技術者の集まりが生み出した、新しい音楽配信の仕組みであり、音楽の楽しみ方であり、音楽との出会い方、である。

自分の好きな曲、アーティスト名を入れると、それに応じて自動生成された「あなただけのラジオ局」ができあがる。

つまり、自分の好きな音楽に関連したまた別の音楽と出会える道筋を作ってくれるのだ。

こう言うと、「偶然の出会いも大事だ!」っていう突っ込みが入りそうだが、自分自身の“網”に引っかかりやすい「偶然」と、引っかかりにくい「偶然」というものがあって、結局は「偶然」というものも程度問題。ではどのような「偶然」が生活を豊かにし、より広い興味へと連れて行ってくれるのか? それはきっと、

unexpected but contextual chance (or unexpectedly contextual chance? )

とでもいったものではないだろうか?

つまり、「予想もしなかったけれども、つながりのある偶然」といったもの。

これが何度も起これば、偶然×偶然×偶然となり、結局は本来出会うとは思わなかったものとも出会うことになるだろう。しかしこのプロセスにおいてすべてがつながっていくので、結局は「偶然が偶然を呼び、知恵や興味を広げていってくれる」のである。

( 20%の確率でしか出会わないものが、同じ確率であと2回分の出会いにつながっていけば 最後に出会ったものに出会う確率は最初のものから数えると0.02%。でもこの0.02%の出会いを生み出してくれるのが、context があるかないかである。つまりこの context を作るところに「偶然」がビジネスになるヒントがある、ということだ)

音楽(or ミュージシャン)側にとっても、その曲を好きになってくれる人に出会う確率が非常に高くなる。

これは、互いのファンをシェアし、つなぎあわせていくことにもなり、パイを食い合うのではなく、パイを互いに共有するという、平面的なマーケティングから立体的なマーケティングへと移行することをも意味する。

また、もうひとつ、既存の放送局との違いを語っておく。

今の日本の地上波は総合放送(色んな番組・色んなターゲットに向けた番組を一局で行う)だったり、USのラジオ局やインターネットラジオ局の多くはそれぞれカテゴリー別・ジャンル別の放送を行っていたりするが、どちらにしても「送信者側(=局)」が決めた「編成」に基づく。

Pandora は、オーディエンスが自ら入力したキーワードに基づき、自動的に「編成」される。

よく言われる Consumer Generated Media ではなく、オーディエンスが control でき、edit できるというところがポイントなのだ。

なぜなら、音楽とは、あくまでも lean back なメディア行動、つまり BGM だったり、ながら聴取だったりに合うものなのであって、そうしたメディアにおいて、オーディエンスが自ら積極的に関わるなんて、野暮ったいからだ。

ある程度勝手にやってくれる、でも自分の興味に関わるものと偶然出会える。

この仕組み pandora が音楽とオーディエンスとの新たな蜜月を作ってくれるのはほぼほぼ間違いないだろう。