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日本の「コンテンツマーケティング」ブームに思うこと

なんとなく業界市民権を得てきた「コンテンツマーケティング」。

「コンテンツマーケティングマーケティングEXPO」なんていう、流れに乗っかったイベントなんかもやられているけれども、行ってみたら「うちはコンテンツ何本を月いくらいくらで作りますよ!」なんていう”SEO事業者”が”コンテンツ制作者”のふりをした出展者や、SEOツールみたいなのばかり。

そう、日本で言われてる「コンテンツマーケティング」って、幾つかの事業者の言ってる定義をちゃんと業界メディア側が検証せずに拡めてしまった感もあると思うんだよね。メディア側は、もっと海外の情報などももとに比較して検証して欲しいものなんだけど(でないと、こういうこと書く僕だけがなぜか正しいこといっても悪者にされてしまうので)。

結局のところ、今、日本で言われてる「コンテンツマーケティング」って、実はHubSpotのインバウンドマーケティングの一部コピー。某コンテンツマーケティング事業者の上のほうの人なんかもはっきりと「HubSpotの資料は役に立ちます」とか、人によっては「HubSpotをベンチマークしてます」って言うからね。で、HubSpotの言う「インバウンドマーケティング」もこの数年で相当進化したものの、そうしたコンテンツマーケティング事業者の言う「コンテンツマーケティング」は昔のインバウンドマーケティングのフレームワークだから、「役に立つコンテンツを提供して見つけてもらうマーケティング」なんて言ってしまう。なんか表面的過ぎて魂入ってない感じするんだよな、このフレーズを見たり聞いたりすると、すでに。

一方、Joe Pulizzi が率いるContent Marketing Institute (以下CMI)あたりがいってるコンテンツマーケティングって、コンテンツSEOみたいな話は殆どない。そういった意味では、日本では「Content Marketing」が、相当ネジ曲がって矮小化されて「コンテンツマーケティング」になってる感が否めない。まぁ、多くの人にはどちらでもいい話だろが相変わらず日本は残念。

例えばね、本来のコンテンツマーケティング業界では有名な CMI の"CONTENT MARKETING EXAMPLES 100"にコンテンツSEOみたいな話って書いてないわけですよ。

本来のコンテンツマーケティングって、「見込み客をSEO的テクニックで集客する」ってことじゃなくって、実際にはブランド認知をあげる、ブランド理解を進める、顧客の継続率を高めるなど様々なマーケティング課題にコンテンツを使って解決するための戦略なのに、この点で日本では、矮小化されてる。

マーケティング課題をコンテンツ使って解決しようとする姿勢と、コンテンツをとにかく作ってマーケティングをしようとする姿勢があるとして、後者は実はマーケティングにならないよね。

コンテンツマーケティング事業者がクライアント企業に対して提供していることを見る機会に出くわすと、「マーケティングサービス」を提供してるんじゃなくって、結局は「コンテンツ制作代行」に過ぎなくって、そのためのカスタマージャーニーやペルソナになってるケースもよく見る。

なので、コンテンツを作りましょう、そのためにカスタマージャーニー作りましょう、ペルソナ作りましょう、ってコンテンツマーケティング事業者に持ち込まれて、うまく行ってないケースは表にあまり出てこないけど、結構すでに死屍累々。そりゃそうだ。そういうことやる前に、マーケティング課題を明確にしていないから。

いわゆる、コンテンツ制作という手段の目的化、だから。

まぁ、コンテンツマーケティング事業者にとっては、コンテンツ制作費取れるからそりゃいいけど。それって、ある意味「マーケティング」を売ってるフリして別のものを売ってることにならないのかな?

 

まぁそんなわけだから、カスタマージャーニーやペルソナなんて役に立たないって言う人たちが出てくるのもわかる。そういう人たちのほうがまともかもしれない。なぜなら、なんのために作るのか?が正しくないそれらはすなわち役に立たないのであって。良いツールでもちゃんと運用されないとゴミ。

コンテンツマーケティングもペルソナもカスタマージャーニーも、本質的な部分でちゃんと理解・運用されず、コンテンツマーケティング事業者の収益化のために単にカタチだけのものになってるのだとしたら、非常にもったいない。

「***マーケティング」ってのがあったときに、「***」の部分がわかりやすい”手法”や”メディア”なときに、手段の目的化が起きやすい。「検索エンジン」、「ソーシャルメディア」、「コンテンツ」etc. マーケティング課題解決ではなく”そこ”や”それ”をやることが目的になりがち。

特に今の日本のコンテンツマーケティングは手段の目的化が進みすぎてる気がして、コンテンツマーケティング事業者は、そのフレームワークがクライアントの課題に有効化どうかを判断することすらなく、フレームワークに当てはめて「コンテンツマーケティングを売って」いる。そりゃうまくいくわけ無い。

というわけで、しばらくしたら「ああ、コンテンツマーケティングね」みたいな感じで相手にされなくなってしまうのじゃないだろうか。このまま行ったら。

ああ、もったいない。

いずれにしても業界の目線の低い感じ、なんとかならないのかなあ、と。

もっと頭を働かせないと。

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