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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

back to Hyper Media, and Web 2.0

ここしばらく、90年代のマルチメディア関連の書籍、特に浜野保樹さんの書籍を再び読み始めている。それというのも当時の「デジタル」とか「メディア」への志向というのは、起業のための手段、金儲けの手段、といったもの以上に「思想」であったという感が強く、今もう一度触れておかなければならないような気がしているからだ。特に、最近注目されている Web 2.0 は(すでに次の金脈ととらえてる人もいるが)僕自身はインターネットの新たな「思想」だと思っており、ここで頭を働かせ、感覚を研いでおかないと次の波を泳ぐことができないと確信している。

というわけで、名著『ハイパーメディアギャラクシー コンピュータの次にくるもの』(1988)を開くと、こんなコトバが目に飛び込んできた。

ハイパーメディアはメディアを増やすものではなく、減らすものだ。

僕らはえてして、インターネットの出現によってメディアの数が増えているように思ってしまうが、むしろテレビのような動画、コミュニケーションツールとしてのメールやメッセンジャーやボイスチャットなどなど、すべて「インターネット」という“メディア”の上で可能になっている。「放送と通信の融合」というコトバはもはや廃れつつあるが、インターネットは、メディアを減らすメタなメディアなのだ、と言えるだろう。

ハイパーメディア=メディアとメディアを媒介するメディア

当然、当時の1988年当時の浜野氏がインターネットを指して言っていたわけではないのだが、いろいろなメディアを媒介する(当然、人と人も媒介する)メディアとしてはインターネットをイメージさせる。

哲学・論理学的には、位相が上なものを「メタ」という。

簡単な例で言えば、壁に「この壁にポスターを貼るな」という「ポスター」があるとする。これは一見矛盾するように見えるがそのメッセージを発するポスターは他のポスターより位相が上=メタなポジションにあるポスターなのである。

さて、話をもどし、インターネット。

インターネットは単純にそれ自体がメディアではあるが、他のメディアとは少し違う。

たとえば「テレビ」は放送波とコンテンツと受信機を合わせて「メディア」と呼ぶ。しかし、インターネットのメディア性はインフラ的な部分にあり、その上にいろいろな「メディア」が存在することができることにある。つまり、インターネットは、「メディアとメディアを媒介するメディア=メタ・メディア」なのである。

Web2.0 というのは、インターネットそのものが変化しつつあるのではなく、そうした「メディア」であるインターネットの「上」にある「メディア」が変化しつつある、という潮流なのだろう。


今読むべき浜野保樹著作↓
『マルチメディアマインド デジタル革命がもたらすもの』(1993/12)
『大衆との決別 マルチメディア・マインド〈2〉マルチメディアマインド2』(1995/02)
『ハイパーメディア・ギャラクシー コンピューターの次にくるもの』(1988/10)
『ハイパーメディア・ギャラクシーII コンピューターの終焉』(1989/09)
『ハイパーメディア・ギャラクシーIII イデオロギーとしてのメディア』(1992/06)
『極端に短いインターネットの歴史』(1997/11)


『ハイパーメディア・ギャラクシー』って、福武書店(現・ベネッセコーポレーション)から出てたんだね...『極端に短い~』でももう10年前か~。早い。


ああ、今回は難しくなってしまった。
Web2.0 については、今発売の Webdesigning 2月号の Web2.0 特集もぜひお読みくださいませ。