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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

個々のマーケットサイズは変化している。

■アシックス商事、新規事業スタート(日本繊維新聞社)

若い世代向けに新しい事業部を作るらしい。
スピードと小ロットがこの事業のミソだろう。

80年代から日本のマーケットは「大衆」ではなく「個衆」「分衆」化してきたと言われ続けてきていたが、マーケティングの実践の現場、広告の現場は相変わらず「大衆=マス」だったことは否めない。

ココに来て、画一的な大量生産型商品が売れなくなってきている、ということだろうか。以前は、それに対してのオルタナティブなオプションは「個別にカスタマイズされた商品」であったが、「まったく個々人にオリジナルな商品」というのはなかなか売りにくいし、売れないものだ。というのも、それですら「まったく個々人にオリジナルな商品」という消費トレンドに過ぎないからだ。

ではなぜ、小ロット型の商品が成功する可能性があるのか、だが、これには、「開発からラウンチまでのスピードが(小ロットなので)早い」ということや、「(小ロットなので)在庫がはけやすく、次の商品へ移行しやすい(=「在庫」という「負債」を抱えにくい)」といった要素がある。当然その都度の開発コストを押さえることができれば、という前提はあるが、最近は100%新規な商品というものはそうそうあるわけではなく、“改訂”程度の商品も多いので比較的容易なことだろう。

また、これはマーケット側・消費者行動側から見ても真なり。

流行というものは、えてして広告のチカラではなく、クチコミで拡がるものである。そのクチコミはある集団の中で伝播するものであるから、そのスピードが早い反面、飽きられること、あるいは伝播の限界値に到達しやすい。当然息の長い流行というものもあるが、そういったものだけを狙うのはリスクが高い。むしろ「小さな規模の流行」も含めて狙うとすれば、「小ロットによって小規模市場を迅速に狙う」というのは非常に理にかなう。

つまりは、「マーケットそのもののサイズが変わってきてる」ということに気づけるか、どうか、だろう。

昔は、デモグラフィック・サイコグラフィックな属性によって商品開発もされていたので、同じくデモグラフィック・サイコグラフィックな属性によるマーケティング・コミュニケーション=マス広告でよかった。でも今はマーケットのサイズ自体がそれぞれ小さい。でも継続性のあるマーケット、つまり、気まぐれでわかりにくい消費者集団ではなく、ある凝集性によって集まった消費者集団に対して life time value を与え続けることができるマーケット=中期的な「事業」なので、マーケティング・コミュニケーションの考え方も、これからは短期的な「キャンペーン志向」から「中長期的で継続性のある広告」というプラニングが必要になってくるだろう。

個衆発見―ニュー消費トレンドの読み方
現代情報工学研究会 ビジネス社 (1988/01)
「分衆」の誕生―ニューピープルをつかむ市場戦略とは--
博報堂生活総合研究所 日本経済新聞社 (1985/01)
「新大衆」の発見―分衆・少衆論を批判する
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