mediologic

メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

ネットの登場でアドクリエイティブはご臨終なのか。

@ryoinsさんと@naga8888 さんのやりとりから。

@ryoins さん tweeted :

"@naga8888 さん。ネットの登場でアドビジネスが様変わりし(新世界創世とするか?)ました。ただ、アドクリエイティヴもご臨終なのでしょうか?ネット登場以来、広告を文化と見るのも恥ずかしい状況。オールドクリエイターとしては、過去50年、何をしてきたのか憮然・慙愧の思い切です。"

ネットの話、アドクリエイティブが臨終となる話、広告を文化と見るのも恥ずかしい話。

この @ryoins さんは調べれば簡単に分かる、広告クリエイティブ業界の功労者たる人物。その人からのつぶやき。

個人的には、ネット、ではなく、「ネット広告」の世界ではクリエイティブはほとんど成長していない、と思う。

僕が電通を辞めてGoogleに飛び込んだのは、一旦インタラクティブなオンラインクリエイティブの世界を離れてみて、媒体/プラットフォームサイドで新しいビジネス領域のクリエーションに携わりたいと考えてみたから。まぁ、3年ぐらい勤めて、"コチラ側”に戻ってきたら、もともと提案しても当時のインフラじゃできなかったことができるようになるだろう、と思っての移籍。

ところが、実際のところは、ネット広告業界のビジネスは、クリエイティブ領域へのリスペクトも、そこを伸ばす、という傾向もないまま、わかりやすい「エクセル上の広告」がすなわち”ネット広告”となってしまう結果となってしまった(※若くて安い人材を使って経営していくには徒弟制によるクリエイティブ領域よりも、フォーマット化し誰でも売れる形式にした「エクセル上の広告」のほうがうってつけだったから、というのもわかる)。

僕が、Googleにいる間、ネット広告代理店の若者たちと話をしても、クリエイティブじゃ儲からないし、社内にそういうものを育てようとする意志がない、ということばかり耳にした。

テレビが出てきた時、それまで新聞の広告クリエイティブに携わることこそが最高の誉れだった当時のクリエイターたちは、なかなかテレビのクリエイティブをやりたがらなかったと聞く(この傾向はUSでも同じだったようだ、ということは『MADMEN』を見ればわかる)。そのため、代理店のテレビ部(つまり媒体部)の中に制作部署(**技術部と言っていた模様)が作られ、メディアと近いところで新しい広告表現にあれやこれやと日々格闘していた先人たちがいた。

広告が文化だ、といったときに、僕は個人的には、広告は(メディア+クリエイティブ)によって構成され、しかもそれは世の中のコンテクストに埋め込まれたときに文化と化すということなのだと思っている。

ネットは、まだまだ「ネット広告=文化」として存在するところまで来ていない。ネット広告に文化がないんじゃなくって、「まだ来ていない」んだと。

それには、ネット広告業界における偏った人材育成の打破と、広告主の理解と、良質なプランナー/プロデューサーの育成、そして、他のメディアに比べ、その"仕事”が保管されにくい、ネット上の広告コンテンツをアーカイブを推進する機関が必要なのではないだろうか。

文化というのは、前世代への否定と尊敬、双方があって次の世代に紡がれているものだと思う。しかしながら、例えば僕が2000年初頭に手がけていたプロジェクトを今の20代のネット広告代理店マンが見る機会はないし、それから学ぶことはほぼできない。

ネットの世界に広告文化を育てるのであれば、過去のネット広告アーカイブと語り部の存在は必須だと思うのだ。