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mediologic

メディアと広告とマーケティングと。

日本の戦略PR界隈が面白いのと出版PRと、真面目に学びたい人のためのおまけ。

PR PR業界 手法/考え方 書籍紹介

 

今朝、アドタイに次のような記事が出ていて業界内の一部で話題です。 →戦略PRは終わりました。

※本件に関しましては片岡英彦さんも文章を書かれてますので合わせてお読みください。 →「戦略PRは終わりました。」と言わないための戦略PR ※『戦略PR』の著者である本田哲也さんも本件についてコメントを述べられています。 →”そもそもの「理解」ー本来のPublic Relationsについてやグローバルな潮流などなどの理解ーに大いに問題がある〜”

戦略PRという言葉の雄でもあったインテグレートの藤田さんが、転向をしたのか、あるいは「戦略PR」という言葉を使ってビジネスをしていくが厳しくなったのかはよくわかりませんが、おお、終わらせてしまうのね、と。

一部では、「そもそも始まっていたのか?」とか「またポジショントークかよ」とかいう意見も見られますが、結局は、近々『リアルマーケティング』という本を宣伝会議から出版されるので、その宣伝も兼ねての文章なのではあるでしょうが。

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ところで、宣伝会議では通称「カスタム出版」と呼ばれる、お金を出せば本を出版させてくれる、半分自費出版なようなものも手がけており、今回四回に渡るインテグレート藤田社長の記事が続くのは、もしかしてカスタム出版の一環として、本の製作費用とワンパッケージになって販売されてるのかな?なんていう想像力もかきたてます。 実際のところ、こうした「カスタム出版」を手がけるところは結構他でもありまして、日経新聞社も日経事業出版センターというをもってますし、株式会社コミュニケーションデザインという会社においては、本を出版することでPRをしましょう!というサービスを提供しています。

こうした、本を出す=権威付けになる、ブランディングになる、というのは今に始まった手法ではなく、大昔からやられてきたPR手法ではありまして、例えば、お医者さんは医療法人としての広告を新聞に打つことは諸事情でできませんが、著書であれば出版物として広告できるということで、結果として病院のマーケティングとして利用されていることがあったりします。

さて、戦略PR業界と言うと、「戦略PR=空気作り」という概念を普及させるに至った『戦略PR』を書いたブルーカレントジャパンの本田哲也さんも有名ですが、他にもベクトルといった会社などが戦略PRをサービスとして提供しており、戦略PR業界は群雄割拠の状態がこの数年続いていました。

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で、一方で(本田さんはそういう状況になってしまったことに非常に不本意だったようですが)「戦略PR」をサービスとして提供しているPR会社の多くが、結局は媒体社に対してなんらかの金銭的な授受によって掲載を獲得するという、仕込みというかまぁ実際のところステマというか、そういうのの温床になってしまっていたのも、業界では知られていた事実です。テレビの番組制作チームや雑誌の編集チームに対して、色々な名目での協力金が行っていたわけですね。

中には「うちに任せてもらえば100%、(番組名)に露出できますよ」という売り文句で広告主に提案していた会社もありますし、「ノンクレジット・ペイドパブ」という名前のサービスを売っていたところもあります。前者は、番組の制作会社などを通じて、常に商品紹介の枠を作ってもらい(=金で買って)そこに企業の商品を「情報」として露出させるというもの。後者は”ペイド(=広告主からお金が払われている)”にも関わらず、「広告」とか「PR」とか「スポンサー記事」といった文言が文章周辺に入ってないパターンです。どちらにおいても、企業からのお金が入っているディスクロージャーがないことが、非常に問題なわけです。

さて、当初は広告主もあまり問題視せずに、広告枠ではなく、番組の本編に露出するとか、記事の中にとりこんでもらえるということで、「おおこれは新しい!広告が効かなくなった時代の新しい手法だ!」と飛びついたわけですが、「戦略PR」という名前がついているものの、結局のところは戦略的でないし、たんに「こんだけ媒体に出ました」という従来のものとなんら代わりがないということで、あまりリピートしないという話を広告主からよく聞くわけです。

そういった意味では、インテグレートという、IMC(Integrated Marketing Comminication)企業である!と藤田さんが主張し続けている一方、業界的には「インテグレートって戦略PRの会社だよね〜」と言われていたことに対して、ついに自ら「戦略PRの終焉」を主張することで、IMC企業として脱皮する意志を強く見せたということなのでしょう。

ところで、インテグレートとよく並んで出てくる戦略PR屋さんは、ブルーカレントジャパンではなく、ベクトルだったりします。そのベクトルのトップである西江肇司さんが、インテグレート藤田さんの「終わった宣言」に対して真逆を行くような本を出されました。それが↓です。

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なんでしょう、このベクトルとインテグレートのバチバチ感。

ちなみに私の視点では、どっちも結局はメディア露出を目論むシカケを提供する会社なのであって、それは従来その露出を担ってきた広告の代替物にはなるものの、メディアの消費の仕方が変わっている今においては、どちらも本質的な課題解決にはならない気がしています。なので、遠目には面白い、二社の真っ向からの対立なのですが、この二社が争っている白いマットのジャングルとはぜんぜん違うところで、マーケティングやコミュニケーションの本質的変化が起きているのは間違いないでしょう。

ちなみにベクトルの西江さんは、シナジーマーケティングという会社さんと一緒に、『実践!インバウンドマーケティング』という本を書かれています。

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信頼すべきスジによると、この本も宣伝会議から出ている「カスタム出版」であり、その後宣伝会議主催で開かれた出版記念セミナーとセットで宣伝会議に支払われてるようです。これはまた「戦略的出版PR」だったらしいですね。カスタム出版は、どうも戦略PR業界では定番のようです。

ちなみに同『実践インバウンドマーケティング』においては、戦略PRによってあるキーワードを流行らせて、そのキーワードを検索させることで、サイトの来訪を促すことが「日本流の」インバウンドマーケティングという主張でした。それはそれで、戦略PRとしてはありですね。あとは「日本流の」と付ければなんでもありになるのだなと学ばさせていただきました。

そうそう、インテグレートの藤田さんは、戦略PRよりもIMCという主張なのかもしれませんが、クラーク・ケイウッドというノースウェスタン大学のメディルスクールというジャーナリズムとIMCに強い大学院の教授(しかもtenureという資格を持ってるレベル)が書いた、"Strategic Public Relations and Integrated Marketing Communications"という本は、戦略的PRとIMCを”流行語として消費するのではなく”、”正しいこと”を”ちゃんと”学ぶ上で、非常にいい書籍なので、最後に紹介させていただきます。Kindleでも買えますし、気になる章ごとにも読めますので、英語の勉強がてら手に取られてもいいのではないでしょうか。

ペラペラと読まれると、きっと、日本で言われてる「戦略PRが終わった」かどうか話が、なんて箱庭でちまちまとポジショントークしてるだけなんだろう、と思うこと、間違いありません。

ちなみに以下がクラーク・ケイウッドの本の章立てです。これを見ただけでも、いろいろ日本の「戦略PR業界」を憂う気持ちはご理解いただけるのではないでしょうか?

"Strategic Public Relations and Integrated Marketing Communications"

PART 1 INTRODUCTION TO PUBLIC RELATIONS AND INTEGRATED MARKETING COMMUNICATIONS

Chapter 1: Twenty-First Century Public Relations: The Strategic Stages of Integrated Marketing Communications Chapter 2: Communications Research: Foundational Methods Chapter 3: Communications Research: Dynamic Digital Methods Chapter 4: Public Relations Law Chapter 5: A Brief History of Public Relations: The Unseen Power Chapter 6: Ethics: Grounding the Promotional Strategies of China's Tobacco Industry in Ethics

PART 2 STAKEHOLDER LEADERSHIP IN PUBLIC RELATIONS

Chapter 7: The Stakeholder Concept: Empowering Public Relations Chapter 8: The Key Stakeholders: Your Employees Chapter 9: Consumer Insight in a Digital Age Chapter 10: Marketing Public Relations: Cementing the Brand Chapter 11: Investor Relations for Shareholder Value: Communicating with the Market Chapter 12: Mergers and Acquisitions: Communications Between the Lines Chapter 13: Charities and Corporate Philanthropy: Giving Back Chapter 14: Government Public Information: Portal to the Public Chapter 15: Broadcast Media as Broadcast Public Relations Chapter 16: Digital Communities: Social Media in Action Chapter 17: Global Media Relations: Traditional through 2.0 Chapter 18: Nongovernmental Organizations: Solving Society's Problems Chapter 19: Associations: A Strong Voice Chapter 20: Agencies: Managing a Global Communications Firm Chapter 21: Issues Management Methods for Reputational Management Chapter 22: State and Local Government Relations: Guiding Principles Chapter 23: Corporate Governance: Operating as an Open Book Chapter 24: Career Paths in Public Relations Chapter 25: The Chief Executive Officer: The Key Spokesperson Chapter 26: Crisis Communications: Brand New Channels, Same Old Static

PART 3 CURRENT AND CONTINUING ISSUES IN PUBLIC RELATIONS

Chapter 27: Sustainability for Business: A New Global Challenge Chapter 28: Environmental Communication: A Matter of Relationships, Trust and Planning Chapter 29: Relationship Transformation: Shifting Media Boundaries Chapter 30: Reputation Management: Building and Maintaining Reputation through Communications

PART 4 INDUSTRIES AND ORGANIZATIONS

Chapter 31: The Automotive Industry: A Race to the Future Chapter 32: The Aviation Industry and Civil Aviation: Flying High for Business Chapter 33: The Insurance Industry: Reputation Management in Good Hands Chapter 34: The Hospitality Industry: Communicating with Our Guests Chapter 35: Sports Marketing: Champion Communicators Chapter 36: Effective Technology Communications: Innovation that Matters Chapter 37: The Entertainment Business: Lights, Cameras, Promotion Chapter 38: Health Care: Harmonizing the Healthcare Message Chapter 39: The Global Restaurant Industry: Communications Strategies Chapter 40: The Retail Industry: Not Your Father's Drugstore Chapter 41: The Pharmaceutical Industry: From Promotion to Constituency Relations Chapter 42: Consulting, Technology Services and Outsourcing: An Integrated Approach to Marketing and Communications Chapter 43: The Financial and Banking Industry: Investing in Our Stakeholders Chapter 44: The Food and Beverage Industry: Catering to People's Palates Chapter 45: The Oil and Natural Gas Industry: Communicating in a Challenging Environment Chapter 46: Internal and External Communications in a Law Firm

PART 5 PRACTICAL SKILLS AND KNOWLEDGE

Chapter 47: Changing Your Own Behavior to Enhance Behavioral Results Chapter 48: Creativity: Powering Integrated Marketing Communications Ideas Chapter 49: Writing for the Ear: The Challenge of Effective Speechwriting Chapter 50: Writing for Your Audience Matters More Than Ever Chapter 51: Storytelling: All Stories are True Chapter 52: Branded Content Strategy: Meaningful Stakeholder Interaction Chapter 53: Immersive 3-D Virtual Worlds: Avatars at Work Chapter 54: Global Public Relations Networks: The Efficacy and Role of Membership Organizations in Public Relations

PART 6 CONCLUSION

Chapter 55: The Future of Public Relations and Integrated Marketing Communications