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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

SAKELIFE - 「頒布会モデル」から「コミュニティモデル」へ

家入一真氏のとこのクラウドファンディングサービスの「CAMPFIRE」で資金募集をしていたので、ネット界隈では既に話題になっている『SAKELIFE』。

SAKELIFE -日本酒を厳選して毎月お届けする定期購入サービス-.

ワインや日本酒の定期購入サービスには昔から「頒布会モデル」というのがあって、毎月いくらか払えば毎回違う酒を送ってくれるというのは目新しいものではない。従来の「頒布会モデル」は、主に新聞や比較的所得の高い層が読むような雑誌・フリーペーパーの出稿によるダイレクトセールスで会員を集め、そして、あとはワンウェイでお酒が毎月送られてくるだけであって、「会」とは言え、主催側や他の会員との交流会は大してなかった。

今回の『SAKELIFE』は、「頒布会モデル」を「コミュニティモデル」へと昇華している。配送される酒量によって「ほろ酔いコース」と「ぐい呑みコース」の2つに分かれてるが、それ以外はほぼ同じ模様。面白いのが「酒器」が隔月で届くことと毎週配信されるメルマガという「サービス」を付加していること。「頒布会」が「商品」を届けることだったのに対し、『SAKELIFE』は「酒器」と「メルマガ」、そして酒自身によって、「酒をたしなむ」ことを届ける。つまり、「商品」を売るのではなく、「サービス」を売るということを行っている。

日本酒というのは単に「おいしいか、おいしくないか」ではなく、「おいしい」と思えるためのエデュケーションが必要な部分もある。「こう飲むとおいしい」というのは、商品が店頭に並んでいるだけでは実現できず、顧客の”育成”がなければ難しい。ただこうしたある種の顧客”育成”というのは、一方的に提供者側が”育成したい”と思っていても、ターゲットユーザーにとってみれば”え?いらないし”となりがちで、自ら進んで”学び”に来てくれる人々がいなければ、いくら教えようとしても伝わらない。まぁ現状のマーケティング活動のほとんどはそうした一方的な「顧客育成」なのだが。

ソーシャルメディアが普及して、サービスの発見がされやすくなっただけでなく、横のつながりも得やすくなった時代においては、マス的な消費者集団観に基づいて区切られたクラスターよりも、自分たちの興味関心によってつながる「トライブ」のほうがターゲット消費者群をあてはめるにはちょうどいい枠組みではないかと考えているが、この『SAKELIFE』は、日本酒が好きな「トライブ」が形成されることになる。しかも「自ら学ぼうとしてくれる消費者」と「サービスの提供者」との関係=コミュニティ化が進むことになることは明らかで、その中で「顧客育成」=「日本酒リテラシー」を育成するための(会員からすると、身につけるための)「コミュニティ」=流通/販売チャネルとなるだろう。

同様の動きは、被災地・三陸における『復興かき』のプロジェクトにも見られるが、単に「商品」を売るだけではなく、そこにおける「コミュニティ」や「エデュケーション」という要素を付加価値として提供するというのは、ビジネス開発的視点からもマーケティング的視点からも注目したい。