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競争は価格だけで起こっているのではない。消費者が買うのは「商品」では、ない。

セブン-イレブンが、コーヒーに続き、ドーナツ市場に参入して以降、他のコンビニ各社も追随するように同様の動きをしている。この流れに対して大きな痛手を受けるのが大手である「ミスタードーナツ」ではないかと思われている。実際、コンビニ各社の商品は”ミスド”の商品とそっくりのコピー的商品が目につくため、競争状態が激化すると考えられがちだが、まだ結論を出すのは早計なようだ。

昨日、新商品発表会においてミスタードーナツ側がコンビニ各社のドーナツ参入について口を開いたらしい。以下がその記事。

ドーナツ市場:コンビニのドーナツ戦争をどう見てる? ミスドがコメント  - ITmedia ビジネスオンライン.

この記事の中で、ミスタードーナツの事業本部長である和田哲也氏が語った言葉の中で次の一言は、マーケティングというものを考える上で非常に重要なことであるように思う。

おいしさというのは、利用動機に対して生まれてくるものなので、単純に「おいしい」「まずい」などと評価できない。ただ、セブングループの商品開発力はスゴいので、利用動機に合った商品をきちんと提供されているなあと思っている。

なるほど。コンビニのドーナツは、コーヒーの需要に対してのドーナツなのであって、ドーナツを食べるという動機とは違うかもしれない。

動機が違うのであれば、互いに競合せず、むしろ市場を拡大していく可能性はある。

例えば、コンビニのコーヒー参入後もスターバックスなどの売上は上昇していることを鑑みれば、単純に「コーヒー」という”商品の争い”なのではなく、”動機の違いによる棲み分け”が起きていると考えたほうが筋が通る。

“消費者側は商品を買っているのではなく、動機に合わせた価値を買っているのだ。”

と考えればしっくり来る。

その「利用動機」が発生する機会のことを「利用機会」と言ってみると、マーケティング観点では次のように整理をしやすくなる。

  • 利用機会の創出
  • 利用動機とそれに見合う価値の提供

この2つが噛み合うことが「モノ(やサービス)が買われる」ということにつながる。面白いことにこの仮説が成立するのであてば、消費者が買ってるのは「商品」そのものではない。

「利用機会の創出」というのは、場所や生活動線、文脈といった消費者が関わる場面でモメントを作ることである。例えば、幹線道路沿いのドライブスルーは、ハンバーガーを買う「機会」を作っているのであり、「動機」そのものを作っているわけではない。しかしながら、ドライブスルーという「機会」がなければ「動機」も生まれない。

一方で「利用動機とそれに見合う価値の提供」というのは、例えばランチどきにドライブスルーで腹を満たすと考えたところで、それが最近流行りのプレミアムバーガーだったりすると、”ファーストフード”としての価値としては高すぎることになり、消費者が欲しい要求に対して”過価値”(※)となってしまう。

(※相手の要求を大幅に超えた、”過剰な価値”のことを”過価値”と名付けよう。この概念については別途深堀りできそうだ)

同様に、コンビニで欲しい価値と、スターバックスやミスタードーナツのような店舗で得たい価値とは明らかに違うだろうと考える。

タイトルにもつけたように、消費者が買っているのは「商品」ではない。

消費者が買っているのは「価値」なのであって、その「価値」というのは、「利用機会」と「利用動機」によって生まれているのだろうと思う。