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mediologic

メディアと広告とマーケティングと。

「ケータイが発見した、新しい時間」

寄稿・記事

同タイトルで2001年5月7日に、「ポケラボニュース第一号」という、当時の博報堂内の携帯メディア研究会「ポケットeライフ研究会」のメールニュースで書いた記事を発掘(というかこのサイトのここにありましたがw)。

というわけで、ブログ側にも転載。

以下ご興味あればお読みください

なんか昔は冴えてたんだな~笑。ちょうど7年前にこの文章書いてたんだね~。 今はダメかも。

ところで、この文章に書いてあることは携帯だけでなく、いまのマーケティングや広告全般に使えるのじゃないかな?

「ケータイが発見した、新しい時間」

2001/5/7 「ポケラボニュース第一号」(株)博報堂 ポケットeライフ研究会

■現代人は「時間」をもてあましている、という逆説

電車の待ち時間、タクシーの中、授業・会議の合間...などのちょっとした時間。知らず知らずのうちにケータイに触っている自分に気づく。なぜ?と聞かれても、どうしてケータイに触れているのか、自分自身で明確な答えは出てこないのだが。

もう、ここまでケータイが普及してしまったら、誰もがこのような経験をしているハズだ。おそらくこのメールマガジンの読者であれば、結構忙しい生活を送っている人たちだろうが、そうした「毎日に忙殺」されている人でさえ、ちょっとしたときには、親指がテンキーをまさぐっている。「忙しい」のにだ。

NHK放送文化研究所の2000年度版「国民生活時間調査」によると、相変わらず有職者の仕事時間は増えているらしい(にもかかわらず、日本人全体で見たときのテレビ視聴時間は増え、睡眠時間は減っている...と同調査が明らかにしている)。つまり日本人、誰もが仕事(学業)や娯楽に「忙しい」のだ。しかしながら、上記したような日常の「ちょっとした」時間は、会議だなんだと忙しければ忙しいほど、その隙間に生まれるアイドル・タイムなのである。

この「極々短い自由時間」は今までに発見されてこなかった。いや、あるいは無かったのかもしれないが、少なくともケータイが発見した「時間」である。そもそも「国民生活時間調査」は、テレビの視聴把握のために行われていたため15分単位で傾向を見ている。そのためそれよりも短い尺度の生活者の行為はなかなか見えてこない。しかし一方でケータイを通じ、それよりももっと短い数分・数秒単位の中で「自由な時間」が生活者の中に生まれてきているのは否めない事実だろう。

■狙いは新たな【可処分時間】~短い自由時間という視点から見たビジネス・シーズ

こうした、個人が自由に使える時間のことを【可処分時間】と呼ぶようにしてみよう。ケータイによって新しく発見された【可処分時間】は極々短い時間の単位である。数分・数十秒の世界。しかし現代の生活者が忙しくなればなるほど(注意しなければいけないのは、「仕事で忙しい」だけでなく、「余暇」にも忙しい、ということ)、この【可処分時間】が一日に起きる回数が増えていく...という仮説を持てば、ここに新たなビジネスのシーズが見つかりそうだ。この【可処分時間】に基づくシーズは以下の2つに分けられる。

(1) ケータイそのもので【可処分時間】を消費させるという方向性 (2) 【可処分時間】の起こりやすい場に対応した商品開発という方向性

方向性(1)については、ゲームだったり、ちょっとしたコミュニティだったり、ケータイ向けのインターネット・コンテンツ/アプリケーション・サービス。ケータイそのものが【可処分時間】を消費させるためのサービスになっているもの、である。この方向では既に多くのサイトが知られているが、これから先、参入する際、あるいは企業がキャンペーンサイトを行う際でも重視すべきことは、

「どこでもアクセスできる」

という視点に基づくサービスだけではなく、

「どの場で」「どのようなシチュエーションで」「どのぐらいの時間で」

といった、【可処分時間】が起こる「場」に対応したサービスを提供することであろう。

一方、方向性(2)は今はまだあまり注目されていない。この(2)の場合は、極端に言えば「ケータイの競合商品を作る」ことだと思っていただければいい。言い換えれば、生活者が【可処分時間】を消費するための商品開発、あるいは【短い自由時間】に対応するために自社商品を見直す、ということだ。

現時点でその方向性を見受けられる具体的な商品事例として、ブルボンのプチ・シリーズである。サイズが小さい以外は従来の商品とは大きく変わらないように見えるが、この【小ささ】が、短い【可処分時間】の消費~電車の待ち時間や授業の合間~にあっている。このケースから学ぶべきことは、【自社商品は「時間」という尺度でのダウンサイジングが可能か?】であろう。

以前、カウチポテトという言葉が流行り、家でビデオを見てゴロゴロしながらスナック菓子を食べる...というスタイルに合わせた、ビッグサイズの商品が発売された。前述したように、生活時間調査によると「余暇時間」も増えている、ということなので、定番化したこうした商品群も残っていくだろう。しかし、【可処分時間】の観点に立てば、まったく同じだがサイズが違う小型の商品=短い時間で消費できる商品という、生活者にとって新たな価値を提供することができるのである。

■新たなマーケットを狙うための視点 ~Beyond the Demographic,“Contextual Marketing”

こうした【可処分時間】を発見するための有効なフレームとして【 Contextual Marketing 】という新しいマーケティング・コンセプトを導入したい。これは私と私の所属する部署のメンバーによって作られた、デモグラフィックでもない、サイコグラフィックでもない新たな「軸」として設定された。Context は「文脈」と訳されるが、従来の性・年齢などでとららえきれない、しかしながらそこに複数の生活者がコミットしているようなものを「Contextual である」と呼び、そこで形成されるマスを“Contextual Mass”とする。

上記したプチ・スナック菓子を Contextual なマーケティング・スキームにおけば次のようになる。

Context 「駅で電車を待つ」 Target 「電車を待つ人々」

---> Contextual な Mass の発見 ---> ビジネスシーズ

Value  「電車を待っている/乗っている間の時間を消費できる」

こうしたシンプルなスキームで、(C=Context)における(T=Target)に与えられる(V=Value)が、この菓子の(V)そのものなのである、ということが発見できるかどうか? 「電車を待つ人々」は菓子そのものを買っているのではなく「電車を待っている/乗っている間の時間を消費できる」という価値を買っている、ということに気づけるかどうか? 勝つためには、いかにこうした 価値 Value を生み出していくか Produce がポイントとなる。

さて、【 Contextual Marketing 】(この新しいマーケティング・コンセプトについて多くを述べることが本文の趣旨でないのでそれは別の場に設ける)に基づけば、ケータイもプチ菓子も、生活者にとっての価値は同じになる。音楽業界の人々が、「ケータイのせいでCDの売上が落ちた」と考えていた時期もあった。しかし、【可処分時間】をどう消費するか、というケータイ自身が発見した Context における「価値」をかけて、ケータイ自身が競合を生み出すフェイズに突入する。つまり、ケータイの競合はケータイではなくなる...のだ。それがこの一年に起こりうることだろう。その際に、この(C)(T)(V)のフレームで、前に述べた【可処分時間】が起こる「場」でどう勝つか、ケータイ関連の各事業者は考えていかねばならない。でなければ、まったく思わぬところから、足をすくわれることになるだろう。