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mediologic

メディアと広告とマーケティングと。

フリークアウト急反落!のニュースから、今後のDSPやSSPやネイティブ広告についての方向をちょっとだけ考えてみた。

アドテク アドテクノロジー業界 ネイティブ広告 事業開発・ビジネスデヴェロップメント 広告業界

 

今週火曜日に次のようなニュースが出まして。

フリークアウトが急反落、15年9月期利益予想の下方修正を嫌気(Yahooニュース/サーチナ)

これを受けて、色々なところで色んな憶測が書かれていましたね。例えば、ITビジネス評論家として知られる大元隆志氏も、

Ohmoto_FreekOutというように書いていて、「フリークアウトやばいんじゃないの?」、「DSPやばいんじゃないの?」って声もあるわけなんだけれども、ちょっとこの大元氏の見立ては違うんじゃないかなあ、と火曜日から思っていたのですが、以下に書いておきましょう。

フリークアウトは上がってる企業なので、当然短信とかをちゃんと見られるので、まずはニュース記事から憶測かくのではなく、「元ネタ」を辿るのが、評論したり書く人間として大事なことかと思うので、ちょっと拝見。

 

 

上記の中でも「通期業績予想の修正に関するお知らせ」の部分から以下を抜粋。

当期においては、RTB経由のディスプレイ広告のみならず、ネイティブ広告等の新たなサービスに注力をしております。これにより、当社の売上高が当初の計画を上回るものの、RTB経由のディスプレイ広告に比べ仕入率の高いこれらのサービスの売上高の比重が高まり、売上原価が当初の計画より上回るため、営業利益が当初の計画より下回る見込みであります。また、平成27年3月30日付の「子会社の異動に関するお知らせ」で公表しましたとおりM.T.Burn株式会社を連結子会社化しております。これにより、売上高が当初の計画を上回るものの、インターネット広告の媒体社に対し広告枠の仕入が先行すること及び広告配信プラットフォームの開発及び営業に係る人件費等が当初の計画を上回る見込みであります。これにより、売上高、売上原価及び販売費及び一般管理費が当初の計画を上回り、営業利益が当初の計画より下回る見込みであります。

ここ、スゴく重要なことが幾つか書いてありますね。特に以下箇所。

RTB経由のディスプレイ広告のみならず、ネイティブ広告等の新たなサービスに注力をしております。

先の大元氏は、「DSPが厳しくなってきたんで、ネイティブアド」というコメントを書かれてますが、そもそもDSPとネイティブアドは競合するサービスでもなんでもないうえに、機能的にも売上的にも代替物の関係にはない。その点で上のコメントについてまず?となった。ネイティブアドはむしろパブリッシャ側、つまりSSPの側なので(←ココ重要な!)、DSPとSSPは補完関係・連携関係にあるわけですよ。なので、大元氏のここでのコメントはきっと「RTB経由でのディスプレイ広告だけでは厳しくなってきたんで、ネイティブアド」と言いたかったのだと信じたいのですが、もしそうでないとすると、アドテク領域について大きな勘違いをされているので非常に残念に思う次第です。

さて、ここの「RTB経由でのディスプレイ広告だけでは厳しくなってきたんで、ネイティブアド」という話ですが、そもそもRTBは、検索連動型広告のオークション形式の広告買い付けに端を発した、運用型ネット広告の買い付けシステムなわけです。しかも、パブリッシャ側の枠の全てを買い付けるための仕組みではなく、一部分の在庫枠を買い付けるものであり、比較的金額の高い広告枠はRTB経由で買うようなものではなかったのです。

例を挙げると、もし、パブリッシャ側の広告枠が、プレミアム枠/ミドルクラスのプレミアム枠/残り在庫といったようにTier分けされた在庫管理をされているのであれば、例えばパブリッシャ自体のプレミアム枠の営業チームのSell Through (実売)が70%だったとして、売れ残る可能性のある残りの30%を(安くなったとしても)エクスチェンジ(=広告枠の売買場)に出して、できるだけ枠の埋まり具合を100%にし収益性管理を行う(yield management/revenue management)ということ。これは飛行機会社が閑散期のチケットを安くして席の埋まり率をあげたり、ホテルが直前に安売りの部屋を出して空室率を下げたりすることと同じこと。空いてるより埋まったほうがいいわけです。

ただし、ただしですよ、例えば、ビジネスクラスのチケットは閑散期だといってもそこまで下がらないですよね? 同様に、ザ・リッツ・カールトンやSt.Regisやペニンシュラなどの宿泊料が直前で空室あるからといって、とんでもなく安くなることはありませんよね?

でも残念ながら、ネット広告の世界では、買い付け側の力が強すぎて(あるいは売る側が弱すぎて、あるいは買い付け側の広告会社などが価値を高めて売るということを考えず、安く売ることに疑問を感じてないので)、比較的"いい枠”でも安値で買い付けられしまっています。RTBやトレーディングデスクなどが強くなればなるほど、ネット広告の価値は下がる可能性もある、ということでもあります(もしパブリッシャ側の広告枠の価値を高めることができなければ)。

実際、日本のCPMやRPMや他のネット広告上位国の1/6とか1/10とか言われており、そんな中で「ついにネット広告が一兆円!」とかいってられないんですよね。もっと大きくなってた可能性もあるわけで。

さて、ネイティブアドとの兼ね合いに戻りましょう。

先のフリークアウトの資料の中に、

当社の売上高が当初の計画を上回るものの、RTB経由のディスプレイ広告に比べ仕入率の高いこれらのサービスの売上高の比重が高まり、

と書いてあります。

資料を調べればわかりますが、先の大元氏のコメントにあるような「DSPが厳しくなった」というのは同社資料を見る限り推測しにくく、むしろ「DSPは伸びている」という状況であると思います(※裏取りしましたが間違いないようです)。

むしろ上記引用の「RTB経由のディスプレイ広告に比べ仕入率の高いこれらのサービス」という部分に目を向ける必要があるでしょう。

また、

売上高が当初の計画を上回るものの、インターネット広告の媒体社に対し広告枠の仕入が先行すること

という記述もありますね。これは広告側のビジネスをやってると常識の範疇ですが、RTBで購入できるような広告枠は、いわばビッド(買った)タイミングにパブリッシャに支払いが発生する仕組みですが、「いい枠」に関しては広告代理店や広告テクノロジーのプラットフォーマーは事前にパブリッシャから枠の買い付けを行い、それをさらに付加価値を受けて売ることがあります。

子会社の件についても、上記のような流れの中で至極当然。その赤字吸収からこの時期に利益の下方修正があったとしても、それは先を見たものであることは間違いない。

なので、フリークアウトに関するニュースについては、

  • フリークアウトは、パブリッシャからプレミアムな広告枠、しかもネイティブアドとして使える枠を仕入れている
  • しかも、先に枠を仕入れる(=reservation)するという資金力がある
  • 結果として、ネイティブアド枠は単価が高い枠になる可能性が高く、結果として同社のDSP事業の売上も伸ばす可能性が高い

と、読むほうが正しい方向であって、「DSPが厳しくなったから、ネイティブアドに走った」と見立ててしまうと、業界のトレンドやフリークアウトの舵の切り方からの「巧さ」に気づくことはないでしょうね。

いやあ、僕はほんと、うまいことやるなあ、と思いますけどね、フリークアウト。

しかもこの動きって、媒体側の収益性を、RTB/DSPを中心とした「在庫をいかにはくのか?」というモデルだけではなく、「高い枠をいかに売りやすくするのか?」ってことに繋がるわけですよ。

とりわけネイティブアドってのは、そういう方向に使うべき媒体社にとっての“手段”だと思います。

ちなみに、同社の佐藤裕介は大学の後輩兼Google時代に可愛がっていた優秀な後輩でありますが、同社の株はもっておりませんし、ビジネスの関係はございません。念のため。

 

あと、やっぱり、業界の知見や経験をもとにちゃんと発信していかないと行けないなあ、自分。

評論家やコメンテーター的な立場の人にとっては、ネガティヴな物言いから入った方がいいんでしょうけど、それが正しい見方じゃなかったら、誤ったものが伝搬されてしまうしなあ。

って思った次第です。そうでないと、いい加減な文章の書き手が最近多すぎですよね、業界に関する。しかもそれについて、likeつけたりしてる業界関係者がいたりして、なんだかなあ、と思いますわ。