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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

”パクリ”問題は「キュレーションメディア」だけの問題ではない。世界最大の動画共有サイトで起きてる問題。

昨年、CampaignAsiaにキュレーションメディア問題などについて寄稿をしましたが、実は”パクリ”問題がもっとも横行していると感じているプラットフォームがあります。そしてその現場のプラットフォーム提供者が対策を講じてないか、あるいは対策が遅れているのか、どうしようもない状況であるのは間違い無いようです。

”パクリ”問題の本質は、1)他人の著作物を勝手に利用しているという著作権における人格権の問題と、2)それによって何らかの利益を得ているという著作権における財産権の問題、この二つに無頓着であるということから起きてるように思います。

特にこの”パクリ”問題については、1)の観点での話で語られることが多いように思いますが、私の場合は2)の方が気になります。これはいわば「フリーライド問題」とも言い換えられるべきもので、他人の著作や労力に”タダ乗り”して利益を得るものです。キュレーションメディア問題でも、以下に書くものものどちらも他人の著作物・コンテンツを使って自らの懐に金を入れてくという悪しきモデルを持っています。そしてその”金”の源は”広告費”。広告主から出ている”金”な訳です。

さて、前述した”プラットフォーム”とは何でしょう?

それは世界最大の動画共有プラットフォーム、YouTubeです。

先ごろ大手ブランドがこぞってYouTubeから広告を引き上げたことは、業界関係者であればほぼ知っているニュースでしょう。

www.huffingtonpost.jp

米国でのこの出来事は、ヘイトスピーチなど政治的な動画や倫理的に問題のある動画の周辺にブランド広告が出ていたことによる「ブランド毀損」が問題だということです。

しかしながら日本で特に問題が起きてるなと思うのは、米国のそれとは違い、先述したようなキュレーションメディア問題と近しい”パクリ”問題において、ブランド広告が出ているという点です。

例えば以下の動画をみてください(きっと後々削除されるかも)。


【映画】”中国に奪われた米国版『GODZILLA ゴジラ』続編”が『最悪すぎる新展開』を迎えた模様。日本側も心底呆れている模様 もうハリウッドはおしまいか…『日中韓ニュース研究所』


【驚愕】ジョンベネ殺害未解決事件の真犯人はやはり〇〇だった!!とんでもない真相!!


【文春砲】高畑裕太・事件の全真相が文春が明らかにした!慰謝料は1500万円!起訴されれば無罪を主張する案件の意味が理解できた!【芸能うわさch】

 

こういったテキスト+静止画(ないしは動画)の組み合わせのコンテンツが多数YouTubeに上がっていて、見かけた方もいらっしゃるでしょうが、例に挙げた上記3つも全て元ネタがあります。

一番最初のゴジラネタは、cinematodayの以下の記事。

www.cinematoday.jp

次のジョンベネ事件のはこれ(間違ってる部分までそのまま

tocana.jp

最後の動画はデイリーニュースオンラインが元ネタ。

高畑裕太の強姦致傷事件の夜の真実 被害者女性のジーパンを脱がし避妊せずに性行為 彼氏と名乗る暴力団関係者(1ページ目) - デイリーニュースオンライン

 

ざっと見る限り、それぞれの動画のアップ主と元記事との関係はないように思います。

となると、これは記事をパクって動画を作ってるわけで、動画によっては広告も出ているわけで、それぞれの動画チャネルのアカウントの持ち主は広告収入を得ているはずです。

上の動画とその関連動画を見てみればわかりますが、結構日本の大手ブランドの広告も出ていて、しかも日本人はこの手のコンテンツが好きなのか、結構な再生回数を稼いでます。

実は自分はもともとYouTubeを日本に持ってくる仕事をしていたので、こういう状況には非常に残念に思うわけですが、パクリが横行し、そこに広告主が知らず知らずに援助を施すことになっている状況を見ると、これはプラットフォーマー側の怠慢であると言わざるを得ません。

このような「記事を使ったパクリ動画」が横行しているようでは、日本におけるYouTube広告は、”キュレーションメディア問題 x 不適切な動画への広告掲出”という、国内事件と米国におけるそれとの二重の課題をミックスしたような状況にあると思われます。

YouTubeでは古くは海賊版動画が問題になり(これは今も巧妙に動画を加工して続いてますが)、それらには著作権者が納得するようにずっと努力をしてきていたはずです(最近はわからんが・・・)。同様に、こうした「記事を使ったパクリ動画」においても何らかの対策を講じていかねばならない事態になるでしょう。

今、日本の広告主はこういうことに気づいてないだけだと思いますよ!

何にせよ、こうした「フリーライド問題」は、悪質な情報商材やマルチなどと同じく、ネットにおけるマネタイゼーションの闇だと思います。とりわけ広告はそのターゲットになりやすい。

このことは業界関係者が認識しておかねばならないことだと思います。

 

 

 

 

※最近めっきりブログのほうは更新少なめになってますが、facebookグループを使った以下のサロンでは、マーケティングブランディング、メディアなどに関する情報とコメントを随時投稿しております。ご興味ある方はご覧ください。

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