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飛行船広告の価値

■【TOKYOの時代】(9)広告 飛ぶ媒体、上昇気流に - MSN産経ニュース

飛行船を使った広告が今後伸びそう?っていう記事。

1960-70年代頃テレビが普及~飽和状態になるまでは確かにテレビ以上の“マスメディア”だったに違いない。
中でも、日立(が1968年に半年かけてカラーテレビの広告やったり)や積水ハウス(が1973年に岡本太郎デザインの広告やったり(ちなみに最初は企業ロゴを入れたかったらしいが太郎氏が「空はみんなのものなのに企業の広告を飛ばすなんてけしからん!」ということで絵だけになったのだとか)の飛行船広告は広告キャンペーンの歴史を学ぶと必ず出てくる(っていうかマニアックか?笑)。世界に目を向けると、グッドイヤーは世界中で広告目的の飛行船を飛ばしており、一時は自社で飛行船運営会社を持っていたほどだった。また1984年のロス五輪の際、フジフィルムが公式スポンサーとなった結果、会場に飛行船広告を飛ばし、本国の頭上を日本企業のロゴが飛んでいるということで、その後のオリンピックではコダックが意地をかけて公式スポンサーを取りに来た、という有名な話もアリ。

ところが数年前、代理店時代に飛行船広告やろうとしたときに聞いた話で、90年代には有人タイプの飛行船が無く、無人タイプのものが2機存在するだけだ、という時期もあったようだ。

そんな飛行船低迷期(?)があった一方、2002年に日本飛行船という企業が設立され、2007年に航空運送事業の免許を取得し、昨年末から飛行船「ツェッペリンNT号」で遊覧飛行を実施しているらしい。

ちなみにこの都心上空を90分で巡る遊覧飛行、126,000円という価格にもかかわらず、期間分は4日で完売したと。。

ただ客席が9席しかないらしく、遊覧収入と広告収入の双方で収支を上げていきたいとのこと。

三菱総合研究所の研究部長・小松史郎氏によれば、

飛行船とテレビCMなど既存広告媒体を比べた場合、飛行船の方が商品購入につながりやすく、企業の好感度も上がりやすいという。
飛行船は独自の新しいイメージがあり、(環境を重視する)これからの時代に適している。見る人は飛行船と広告主である企業を重ね合わせ、企業のブランドイメージが高まる

ということで広告媒体としての可能性を評価しているらしいが、前述したように“マスメディア”だったころの“飛行船広告”とはすでに違うわけで、また都心の建築物の状況も40年前とは大いに違っている。そんななかなぜこのような評価になるのか、不思議。

メディアの価値は時代によって変化する、これはセオリー。

テレビCMなどの既存広告媒体と比べるほうが疑問。

むしろ、テレビCMではカヴァー出来ない“メディア価値”を見出してそれを提示したほうが“飛行船広告”の価値が出ると思うんだが、どうだろう。

たとえば機動性。テレビCMは(ワンセグなどはあるにせよ実質的に)自宅にいないと見てもらえない広告。しかし飛行船広告はアウトドアが主戦場になる。屋外に人がいるシーズン、エリアで訴求したい商品・サービスには最適。

たとえばタイムリーなメッセージ性。夜間に飛ばす飛行船は側面にディスプレイを設置可能なものも。当然動画にての訴求も可能なので、例えば花火を飛ばす前、飛ばした後に、ビールの広告を。この辺は『ブレードランナー』のオープニングや上海の広告船が参考になるかも。

※USには The Lightship Group という専門企業があり、そこではまさにこの2つの使い方を行っている(同社のサイトは必見)

などなど、“シカケ”思考になれば色々な“飛行船ならでは”の使い道が考えられそうだ。