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既存広告会社への潜在的脅威

■野村不動産、不動産ネット広告で新会社(NIKKEI NET)

表題のとおり野村不動産が不動産広告へ進出する。新会社の内訳は野村不動産6割・セプテーニ4割といわゆる専業代理店も大きなシェアを持っている。

さて、この数年既存代理店(英語では legacy agency とか traditional agency と呼ばれてしまっている)の脅威は、インターネットそのものと、そこを中心に急激な成長を遂げているインターネット専業代理店であった。しかも(すくなとも僕はそう思うのだが)、彼らはすでに「インターネット専業代理店」ではない。この言葉自体が既存代理店や既存マーケットからつけられたような言葉であって、彼らの成長を過小評価していた。結局それは、既存代理店が各「ネット専業代理店」と提携etcをせざるを得ない状況を生み出してしまった。

しかしながら、もともとインターネット関連部署(当時は“デジタル”といっていたが)は、電通、博報堂においても96年前後からできていたし、それはサイバーエージェントなどの専業代理店が立ち上がるorネット専業代理店に鞍替えする以前の話であり、僕自身はそういった部署には各代理店の“頭脳”級の人々が集まっていたと確信している。

ただ悲しいかな、ネット・バブルの崩壊の際にこれら専門部署をつぶしてしまうという決断をしてしまったり、あるいは続けていても旧来のマスメディア的発想から離れられない(いわゆる『バカの壁』?)ままここまで来てしまったか、というマーケットの「大きな流れ」をつかんで、2006年まで来た既存代理店は皆無である。それゆえ、各「ネット専業代理店」と提携“せざるを得ない”状況を生み出してしまい、自らのチカラだけで生きていく能力はすでに欠如しているのだ。

ここにきて、このニュースのように「他業種からの広告業界参入」が盛んになりつつある。

10~数年前に、いくつかの著名コンサルティング・ファームが大手代理店に共同で会社を作ろう、と持ちかけたことがあったが、当時の広告代理店側は結局その提案を受け入れることはなかった(やっぱり『バカの壁』?)。当時はきっと他業種からの広告業界参入なんて難しいという意識があったのだろう。

でもこれははっきりいえる。

広告業界ほど参入障壁の低い業界はない。

既存の広告会社は「彼らはテレビとかの広告枠は買えない」と思っていたし、あるいは新聞業界との口座開設にあたり横槍をいれたりといった、既存マスメディアにおける“なわばり”を信じていたし、それを強固に守ろうとした。

しかしながら、それらのマスメディアとの“口座”を持ついくつかの中小代理店が潰れそうな勢いだし、それらを買収・資本参加・提携して既存マスメディアへの“口座開設”を果たすことなんてもう簡単なことだろう。

またいうまでもなく、インターネットやプロモーション領域で顕著なように、大量投下のマスメディアではなく、よりセグメントされたメディアやマーケティングを好む広告主も中小はもとより、商品によっては大手広告主にも広がってきている。

このような環境下で、「既存代理店にはマスがあるから」と安泰していれられるはずがない。すでに相当な周回遅れになってきているので、もう間に合わないかもしれない。

整理すると、既存代理店への潜在的な脅威は、

・ネット専業代理店の総合広告会社化
・異業種からの広告業界への参加

そして、

・変わらない社員の意識

だろう。

これらに対応できる既存広告会社はどこなのだろうか?

「うちは本気になれば大丈夫」なんてことを言っている社員がいる限りは相当ハードル高そうだが...