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広告主は何を考えているかを学ぶ〜10/14 中央酪農会議前田事務局長のお話まとめ。

以下にインラインに書き連ねたのは2010年10月14日に東京フォーラムで開かれた『宣伝会議プロモーション&メディアフォーラム2011』の一セッション、ポスト『牛乳に相談だ。』として展開されている『MILK JAPAN』に関するお話。登壇者は責任者の社団法人中央酪農会議の前田浩史事務局長(@hirochanmaeda )。

タイトル「MILK●JAPANが目指すコミュニケーションの新しいカタチ ―体験共有による牛乳「価値」の協創― 」についての記録です。

※実際はtwitterで当日ツダりました。それを時間軸で並べたものが下記になります。

非常に勉強になると思いますので、ぜひ一読いただきたい。

以下、前田さんのお話。

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前田「『牛乳に相談だ。』キャンペーンは主に若い世代に向けて。キャンペーンの認知は成功。ただし、中高生が以前より牛乳を飲んだ、というところまで残念ながらいたらなかった」

前田:「牛乳消費量の減少トレンドに歯止めがかからなかったのだ」

前田:「今から話をするのは通常のMKTGと違い、牛乳を飲む、という行為をいかにして継続させるか、増加させるか。新しいテレビを作って新しいニーズを作って買ってもらう、というのとの違いは、既にある生活行動をどのように促進させるかという話。」

前田:「そういう意味では社会的な変化をどう起こすのか、という意味で、他のMKTGと少し違うかもしれない」

前田:「(今回の試みは)新たな活動のステージへ:解決すべき課題はなにか?」

前田:「これらの活動は全国の酪農家からお金をもらって、集めてやっているもの。昔のウールマーク(羊毛農家が化学繊維の普及に対し、羊毛を守ろうとして行ったキャンペーン)に近いかもしれない・」

前田:「(中央酪農会議のマーケティングは)農家のお財布から少しづつ出してもらっている予算から成り立っている。前回の「牛乳に相談だ。」は年間8億円。でもさらに農家の経営が厳しくなってきており、今回は年間4億円になっている。これでどう効果的な施策を打てるか。」

前田:「決まった予算の中でなにをやるか、という姿勢についてはみなさんのお役にたてるかもしれない。」

前田:「30代以下主婦は牛乳好意度が高い。しかし家庭内常備率は低い。~意識と実態にギャップがあるのはここ。これは「牛乳に相談だ。」を5年間やることでわかってきたこと。」

前田:「この世代は小さなお子様がいるので、家庭内常備率が高くあってほしいのに、低い。本来は牛乳消費量は自然にあがることが期待されるのに。」

前田:「時代の変化とライフステージが、日本人をどのように変えているか。ここを理解しないと発展はない。」

前田:「母親が牛乳好きな家庭では8割の確率で子供も牛乳が好き。」

前田:「牛乳は哺乳類にとって必要な食品。なくなっていけば生存の危機にもなるかもしれない。」

前田:「“何時も冷蔵庫に牛乳が置いてある”と母親は考えているが、子供たちがそう思っている比率とに大きな開きがある。」

前田:「牛乳は、社会的規範的な飲み物、ルール化された飲み物、という社会心理学的分析結果が出た。なので一方では母親は大事と思っているが、飲ませなければいけないというストレスも含む可能性がある。」

前田:「30代以下主婦は、40代以上に見られるような「おいしさ」「貴重さ」という価値意識が弱い。朝忙しいときでも「牛乳一杯だけでも飲んでいきなさい」という会話もない。」

前田:「そこで今回の戦略は「若い母親の「子育て」に「牛乳で貢献すること」を基本戦略に!」した」

前田:「依然として(こどもたちの)食生活における牛乳の価値は高いはず。」

前田:「それでは、若い母親層とのコミュニケーション上の課題は何か? 企業や組織が発信する情報の信頼性が低下する一方で、(略)消費者同士がつながれる、緩やかな絆のソーシャル・キャピタルが新たなコミュニケーション構造をつくる。」

前田:「情報の価値・信頼性の相対的低下についてどのように施策していくか。牛乳に相談だ。を始めた5年前には想定していなかった変化。」

前田:「自分との関係性が感じられるような「意味」のある情報を、若い母親のインサイトをつかみつつ発信していく。この人たちの生活上の課題に牛乳が答えられる=動かすための価値を発見、生み出し、コンテンツ化していく。」

前田:「若い主婦の課題、”賢くしっかりした母親でありたい””自分の欲望を満足させたい”というこの2つ、両方を満たすこと。」

前田:「牛乳は1万年前から人間に飲まれている飲み物。したがってミルクの文化性というものを伝えることで母親のインサイトに関わることができるんじゃないか。」

前田:「「動かすための価値」 それは牛乳を飲む効用だけでなく、牛乳を飲むってどういうこと、という文化的価値。」

前田:「話者としての「酪農家=生産者」と「ママ友=同じ悩みを持った人々」x「体験共有による豊かなコミュニケーションの成立」=「MILK●JAPANコミュニティ」の形成。社会学的にも社会心理学的にも、「共通できる体験」を人は重要としている。」

前田:「MILKを通した「緩やかな絆」=新しいソーシャル・キャピタル」

前田:「牛乳に相談だ。は、マス広告中心の情報発信→B2C / B2C2C・・・・・」

前田:「MILK●JAPAN→(M2C)milk C2C2...... ミルクが間に入る人と人の関係がつくれないか。」

前田:「現在、超早朝番組『ミルクチャポン』というものをやっている」

前田:「ミルクチャポンは、お金が無いので”録画予約してあとで見てもらうこと”を前提にして作った番組。コミュニケーション展開全体としては>メディア型体験共有コンテンツ/イベント型体験共有コンテンツ/店頭型体験共有コンテンツ、という構造。」

前田:(都内で行ったイベントの説明。 http://ht.ly/2TfLx

以上。

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前田さんは、社会学とか社会心理学の出身ではなく農学部出身の50うん才の方なんですが、実際のお話ではそれらの領域に通づるテーマが散りばめられています。

また、コトラーの『マーケティング3.0』的視点を自で行ってるような気配さえも。

残念ながら当時の会場での集客はまばらでしたが、ぜひ機会があれば前田さんのお話をみなさんも聞いていただければと思います。

ちなみに『MILK●JAPAN』の活動状況は、コチラの twitter ハッシュタグで見ることができますよ。