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仕事の質と信頼はどっちが先か?

仕事と「信頼」というものについて考え方を整理するきっかけを与えていただける記事がありましたので。

まずは本文をお読みになる前にこちらをお読みください。

仕事の質とスピードを上げるコツは「信頼」にある - ihayato.書店 | ihayato.書店.

仕事が遅い理由が「人を信頼していないから」というのは、つまり、”仕事が遅い”=”書類作成や説明を求められる仕事に時間を取られるから”であって、結局それは「人を信頼してないから書類作成や説明を求められるでのはないか」という仮説は面白いですね。行政機関は説明責任を求められるから「仕事が遅い」のであって、「信頼」すれば仕事が早くなるというのであれば、その「信頼」はどうすれば築くことができるのでしょう?”お役所仕事”という言葉があるぐらいなので役所の遅い仕事はみんな嫌いなわけでその方法があるならみんな「信頼」するでしょう。ただ、公的な書類というのは効率化は図れるかもしれませんが、「信頼してるから」という理由で書類が簡便化できるというのがイメージがわきません。

ところで、確かに僕も講演依頼などがあったときにいちいちスライド資料確認したいとか言われるとめんどくさいなあと思います。ただしそれは講演のとき。通常のプロジェクトを進めるときには「逐一説明を求める」「信頼しない」というのは「信頼を築けてないフェーズ」から仕事が始まるからであって、それは仕事などを通じて「信頼」を築いていくしかないと思うんですね。一方で説明などを求めてこられないケースについては、「信頼されている」わけでそれはそれで最初からプレッシャーなわけですよ。というのも相手の「信頼」というのはこちらが思っている以上に膨らんでいたりするものですから。で、「信頼されてない」いや正確に言うと「”まだ”信頼されていない」フェーズにおけるやりとりを”コミュニケーションコスト”として考えるなら、もちろん低コストで済めばいいわけですが、それすら、特にコンサルティングやプロジェクトマネージャーやファシリテーターの役割として、低くする事自体が仕事の能力なんですよね。

また元の文章にあるようにフリーランスは必ずしも”時給”で働いてるとは思いませんが、[ 頂けるお金 ÷ 費やす時間 ] についていかに効率化を図るかも全て自分自身の問題であって、相手のせいにするとそれ自体が「信頼」を失う原因になります。ましてやそれを公言すると。もちろんデ・マーケティング的に言えば「信頼してくれる人だけ仕事をくれればいい」となり、これはいわばファッションブランドが「この金額を出せる人だけ買ってくれればいい」と、原価よりもはるかに高いブランド価値をつけて売るのと同じような戦略です。そう見れば、限られた仕事しないブランドもののフリーランス、として成功すればいいんでしょうね。

ちなみにフリーランスになればもっと「信頼」というものに対するハードルが高くなります、普通。というのも、企業という後ろ盾がない限り、預けた仕事をちゃんとやり遂げてくれるかどうかは依頼主からしたら冷や冷やものなわけですよ、都度。企業の中に入れば、いざ何らかの瑕疵があったとしてもそれは”法人”としての責任になりますが、フリーランスの場合は個人事業主ですから無限責任なわけです。なので、「オレを信頼してくれ」と相手に言ってそれで相手が応じたら、すなわち「オレは無限に責任をとるよ」と言ってるのと同じわけなんですよ。ああ、重い。。。

ところで、このブログの記事はタイトルに、「仕事の質とスピードを上げるコツは「信頼」にある」と書いてあるんですが、一般的には「仕事の質とスピードを上げる」と「信頼」が築かれる、となるんでしょうね。つまり、仕事の質やスピードと「信頼」は比例関係にあると。おそらくは”評価経済社会”的な観点から、「信頼」があると「仕事の質やスピードがあがる」と言いたかったのでしょうが、残念ながらこの書き方ですと、「オレの仕事の質が高くなかったり、スピードが遅くなってんのはアンタたちがオレのことを信頼してくれないからだ!」という風にも読めてしまいます。なかなか日本語って難しいですね。

「信頼」が「仕事の質やスピードを早くする」って観点は面白いと思いますけどね。 でもそもそも「仕事の質やスピードが早い」から人は「信頼」するんでしょうけど。

つまり、誰かに「信頼”される”」ためには、自らその要素を見せないと”され”ないんですよ。

「信頼」ってのは自分側から押し付けることはできません。