読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

mediologic

メディアと広告とマーケティングと。

フォード・システムを理解することは、頭のネジを締めることです(改訂ver1.2)

まじめ

昨日から本日にかけて『ライフネット生命の出口社長のことばから考える人材配置の最適化〜「比較優位」の観点から。』という記事をお読みいただい方、ありがとうございました。

もし、上記記事をまだご覧になっていない場合は、以下の文章に入る前に↑を先にお読みになることをオススメいたします。

さて、また今日もインスピレーションやモチベーションが沸き起こる記事がありましたので、またブログを書いてしまいました。

その記事がこちらです。

変化する「仕事ができる/できない」の基準- iHayato.書店

こちらの記事では、フォードのいわゆる「フォード・システム」を例にあげて、上司の在り方を説いてますね。では、

もともと「フォード・システム」は、1)まだクルマが普及してなかった時代であった時代に、2)高価だったクルマを安価に売ることができるように作られた”経営管理”の仕組みであって”工程管理”の仕組みです。それまでクルマはほとんどカスタムモデル/ハンドメイドみたいなものであって、部品や製作工程の標準化がなされていませんでした。つまりフォードは、”標準化された商品 the standardized product”を作ることで安価に提供することを目指し、その工程の効率化を行うために”簡単なトレーニングさえうければ、誰であっても工程に参加できる”ということを行ったわけです。つまり、「マックジョブ」につながるような流れ作業/マニュアル化はこの時始まったと言えるかもしれません。実際どのぐらい効率化されたかというと、それまで12.5時間かかっていたのが、1時間33分、つまり1/8の時間で1台のクルマができたと言います。これによって時間/コストあたりの生産台数が増え、クルマが世の中に飛躍的に普及するキッカケを作ったわけです、ご存知のように。同じ物を大量に作る mass production の革命で、誰もが買いやすい金額になったということですね。

※ちなみに一説によれば、この流れ作業 assembly line 方式の mass production system を作ったのは実はFordではなく、Olds Motor Vehicle Company だという話もあります。Fordのほうが1908年に対し、Oldsのほうは1901年。その時に作られたクルマが、”Oldsmobile Curved Dash”というもので(下の動画)Oldsは流れ作業方式についてのパテントを持っていたらしい。それをベルトコンベア conveyer belt 方式にして完成させたのが Ford なんだということです。

もちろんこの流れ作業が機械的過ぎて労働者の生産性を下げたことも記述しておくべき事実です。しかしながらそれは、上司が「ここのネジを今日中に締めておけ」とウザいからとか、自分に信頼をおいてくれないからスピードをあげて仕事ができないのだとかいう話ではなく、何時間も同じことをおこなうベルトコンベア方式の単純作業が社会的疎外感 social alienation や倦怠感 boredom を引き起こしてしまうという問題があったからです。これは生産工程に関する話や労働社会学の中では必ず学ぶ話で、反復作業によるストレス repetitive stress injuries が問題なのであって、上司に「ここのネジを今日中に締めておけ」といわれるからではないのです。そのような考察をしてしまうような人がいたとしたら、その人は「お前の頭のネジを締めておけ」と言われても仕方がないかもしれません。

さて、この「フォード・システム」に代表される大量生産方式は、当時もっとも効率的でかつそれゆえに安価に社会に標準化したプロダクトを提供できるために、このあと数十年続くマス消費の時代に非常にマッチしていました。それが人間性を失う工程ではないか?ということについてはチャップリンが『モダンタイムス』(1936)で描いたように常に問題提起はされていたようですが。

さて、では皆さんに質問です。フォード・システムの提供で真っ先に辞めていったのはどんな人々だったと思いますか?

答えは「熟練工 skilled worker」です。

効率化して単純作業が増えていくと、誰もが作業ができるようになる一方、熟練したスキルの価値が低下するわけです。 いいですか、この場合、熟練したスキルが効率化された作業に置き換わったのです。何も「能力のある若者が仕事できないから辞めた」とかそういうことではなく、年長の熟練した人々が辞めていったわけです。

一方、面白いことに単純作業を行う労働者たちは「高給取り」になりました。日給5ドル、年収で1,000ドル以上。これは離職者が増えたときにフォードが行った措置の結果ですが、大体当時のフォードの最低給与の二倍にあたる給与が支払われたということです。この”単純労働なんだけど高給になった”というのは「フォード・システム」の話を一度でも調べたことがあると必ず出てくる有名な話。他にもいろいろな離職対策が行われましたが、単純労働に高給を与えるというのは非常に注目すべきものでしょう。なぜなら、それだけ生産工程の効率化が行われていたからこそ、高給を支払うことができたということでもあるので。この点は、15分でブログを一本書くという単純労働で”ある月”(※注・平均ではありません)の”月収”(※注・売上と月収をイコールで書いてしまう人がいたとしたら、また「頭のネジを締めておけ」といわれるかもしれません)を得られるということに近しいものを感じます。つまり、スキルに収入がついてくるのではなく、単純労働の繰り返しに収入がついてくる、というケースなわけです。どちらも。

さて、話を「上司/部下」関係と「フォード・システム」について書いてきましたがいかがでしょう?(え?書いてない?そりゃそうです。両者は関係ないのですから!) フォード・システムは別に上司/部下の関係で語るような仕組みではなく、生産工程と労働者についての課題と対策について考えさせられる仕組みなのです。歴史を正しく理解すると、すごく勉強になりませんか? 僕も件のブログ記事に出会うことで久しぶりに過去に学んだ知識を思い出し、再整理することができました。上記に挙げたブログの執筆者に感謝する次第です。

今後も、何かインスピレーションやモチベーションの起こるブログ記事を読むことがあれば、このような文章を書きたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

【参考文献】 『現代の分業と標準化―フォード・システムから新トヨタ・システムとボルボ・システムへ』 『人間主義の経営ーフォード・システムを越えて』 『ものづくりの寓話-フォードからトヨタへ』 『凡人が一流になるルール』 ※上記の本は全て読んだことがありません。アフィリエイトです。ここまで読んだ方はぜひクリックしていただいて何か本を購入していただくと”お布施”として私に入りますのでよろしくおねがいいたします。

【参考サイト】 Henry Ford Changes the World,1908 The History of the Automobile - The First Mass Producers of Cars - The Assembly Line ※こちら冗談抜きでいいサマリーになっているので英語の勉強がてらお読みになることをオススメいたします。