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メディアと広告とマーケティング、そしてサービスデザイン。

“ミッション”が欠けている~ネット広告業界について最近おもったこと(1)

最近、ひょんなことからとあるネット系広告代理店の広告主プレゼンに付き合うことがあった。

もちろんこうしたケースは初めてではないわけで、なんとなくは感じていたけれでも、言葉として「腑に落ちた」。

ネット系広告代理店というのは(僕から見れば)若者が多く、正直広告業界の“すごいプレゼン”を見て学ぶことが少ないどころか、ほとんどない。

で、そんな彼らが広告主との間での「共通言語」にできるのは、“数字”だけ、なのだ。

インプレッション数、クリック数、CTR、コンバージョン率etc......... そんなキーワードを元に、さも「広告主は広告に対してROIに厳しく、そして数字でないと企画が通らない」と信じている。誤解の無いようにいっておけば、もちろんこれらの数字は広告がマーケティングの一部である以上、重要なものである。しかし、広告主が今求めているもの、そして“代理店の力量”が試されているものは、そうした算出式ではなく、むしろ、自分たちの商品・サービスがより人々に認知され、買ってもらえ、そして使い続けてもらうための「ストーリー」なのである。

以前にもこのブログで書いたのだが、ネット系広告代理店の中で自らの付加価値をあげることに成功しているところはほとんどなく、その分、「値下げ」という手段でしか勝負に出れない=企画で勝負できない、ところが多い。これらは、「数字こそ全て」な提案がもたらす、悪しき道程だろう。

さて、話を戻そう。

上記したようにとある代理店のプレゼンに同席した際に、若干ながら口をはさまさせていただいた。その際、僕自身はいわゆる「数字」の話はしていない。彼らが提案した企画の内容について「こうなってこうなってこうなる」というようなストーリーと今の世の中の背景、期待されるユーザーの行動について説明しただけ。しかし、先方にはこの内容について納得いただいたようだった。

「具体的に説明する」ということはプレゼン・提案時に非常に大事なことだと僕は思っている。しかしながら、ネット系広告代理店の中では、それが「数字で説明する」ということに変換されがちなようだ。「数字で説明する」というのは、「具体的であること」のサブセットに過ぎないのであって、消費者の期待すべき行動を図示する、企画の意図を説明する、など「具体的」な話の仕方はいくつもある。だが、どうもネット系広告代理店はこの点でトラディショナルな代理店に劣る。つまり、「広告キャンペーンというストーリー」を語ることにおいては、まだまだ未成熟だ。その「ストーリー」がちゃんとしてあって、それを構成する「数字」がついてくるのが理想形なのだが。。。

そのためには、「ネット広告は(あるキャンペーンにおいて)何をミッションとするのか?」を企画の上で練ることが非常に重要。

「AISASのSASの部分です!」ということではない。

広告主のキャンペーンにおいて、理解促進を促すのか、購買を促すのか、それとも他の何かなのか? そしてそれを広告主の商品・サービスに関連する言葉に変換する(たとえば、「理解促進を促す」⇒「***の商品の***という効能について理解してもらう」、「***というサービスの***な部分について理解させる」)ということをすれば、おのずと、ネットの特性を生かした「ネットがやるべきミッション」が見えてくるはず。

そう、この「ミッション」の部分が欠けてる企画が多いこと多いこと。

今のネットの企画が面白くなくなっているとしたら、「ネットになにをやらせたいのか?」について広告主と“握ってない”ことが大きいのじゃないだろうか。

ぜひこの「ミッション」(=ネット広告がキャンペーンに果たす役割)についてちゃんと、広告主サイドの言葉に“練った”企画を入れていって欲しい。

そして「ミッション」がちゃんと入った「ストーリー」ある企画というものはきっと広告主に「共感」をもって受け入れられる。

そこからその実行可能性について「数字」で“検証”していく、そんなプロセスでできればベストだ。